湯川秀樹著 「創造的人間」 筑摩書房1966 によれば、
「人間が成長してゆくにあたって、はじめの時期、子供の間は無批判に真似をする、考えるというよりも、ただおぼえるということが必要な時期があることはたしかである。・・・。小学校にまだ入らないころから、いろいろな漢籍、論語とか孟子、その他の中国の古典を教えられた。・・・。人間の想像力というものは、ちょっと考えると記憶力と反対のもののようにみえますが、実はそうではなく、創造性の発現は、相当大量の、そして相当程度まで系統だった記憶を素地として、はじめて可能なのであります。」
個性を重視し、創造性を発揮せよと指示したとして、その素地にあたる蓄積がなければそれは難しいということになります。創造性を発揮したり発明をしたりできる人というのは、常に何かヒントになるものをあさったり、記憶の引き出しにうまく収納しているように思います。そして必要なタイミングに必要なだけを引き出してきて結びつける力があるということだと思います。
自由研究のテーマを与えて研究させたり議論させたりするとき、浅くて終わってしまう生徒は、その背景知識が少ないためと考えられます。暗記一辺倒の学習は問題がありますが、記憶としてうまく収納したり記憶どうしを結びつけたり、うまくアウトプットする技術というものも、問題解決をせまられれる現代にとって重要な学びと思っています。