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整体ナビゲーターゆにちゃんの日記

読書の秋ですね。


我が師匠の師匠野口晴哉先生の「整体入門」と言うちくま文庫から出版されている本の中から


今、ビッビッ!ときたので、ご紹介させていただきます。


少し長くなりますが、興味のある方はお付き合いください。


以下、引用開始


 体力を喚び起こすのは 「勢い」 である


 こういう非常のときでなくとも、こうすれば儲かると思うと、水の冷たさも風の寒さも


気にしないで、せっせと夜もねずに働いたとか、炬燵の中で寒がっていた子供が、凧を


もらったとたんに寒い風の吹く中へ飛び出して元気よく遊んだとか、チップをもらった


ら急に荷物が軽くなったとか、事務所では眠かったが麻雀をしだしたら徹夜してしま


ったとか、平素でも体の裡に勢いが出るような条件が出てくれば、できそうもないこと


をやってしまう。ゴルフでも将棋でも、賭けるととたんに強くなったとか、夜食のビフ


テキとビールを想像したら、がぜん疲れが抜けてしまったとか、非常時じゃなくとも、そ


ういう力の出ることはたくさんあります。非常時じゃないとそういう力が出ないと思う


ことは間違いです。


 ことに病気になった時など、他人の知識や後援をあてにして、こういう力を発揮しな


いで不平ばかりいっているようなことはおかしい。持っている自分の力を自覚しないで


助けを求め、自分の体のことは、自分の力を発揮して処するべきだと思わず、自分の


大便を他人に気張ってもらって出すつもりでいるから、体の中に勢いが起こらない。痛い


とか何とか、周囲の同情を求めるようにその声を使ってしまうから、自分の体の中の


勢いにならない。 だから、こういう力を喚び起こせない。体力がないようなことをいう


が、そうではない。頼ることやすがることばかり考え、他人の力をあてにしているから、


自分の力が働かないのである。持っている力が潜在したままで役に立たない。もう少し困


れば力が出せるかもしれないのに、庇ったり、守ったり、力を貸すことしか考えない周


囲の人は、他人の排便を気張っていることに気付かねばなりません。その人は親切な行


為と思っていても、他人の体の中に起こる勢いを消しているかもしれないのです。


 いろいろと余分な栄養を与えて、食物から栄養を摂取しようとする体の勢いを消して


しまうことなど、よくあることです。給食を子供が嫌がるのに口の中に押し込み、食べ


ないと叱り、また、罰を与える教師があるそうですが、それではホルモンを分泌する力


のある人に、代用ホルモンを注射しているのと変わりありません。子供は養殖の豚では


ないはずです。体が要求しない栄養は体にも心にも毒になります。牛の頭をかかえて草


を食べさせるような親切の押し付けは、発揮できる力まで萎縮させてしまいやすいので


す。衛生とか、養生とか治療とか、体のことになると、こういうことが多いのです。


 

文明生活を見直そう


 私のいいたいことは、表面に表れている体力だけが体力のすべてではなく、潜在し


ている体力も体力であることを自覚し、自発的に行為すれば、こういう力を活発に喚び


起こすことができるのだということであります。


 近頃は人間の意識が発達したためか、笑うのでも、こんなことを笑ったら他人に笑わ


れはしまいかと、あたりを見回してからでないと笑えない。泣くのでもそうである。体


中を震わせて、泣いたり怒ったりすることが珍しくなった。しかし、体の勢いをつくり、


体の力を発揮するためには、笑う時は声をあげて笑わなければならない。泣く時は泣き、


怒る時は怒る。気取りのために、体中で泣き、笑い、怒ることもできないようなことを


していては、活気が興ってこない。


嗜みとか慎みとかが大切であることは否定しないが、それは、体中で笑い怒れる人が


慎むから慎みであり、嗜みなのであって、エヘへへヘと誤魔化し笑しかできないよう


では、腰が抜けているというだけであります。自然の感情の発露がなくなってしまうよ


うでは、人間が人形に近づいたといえます。もう一度、原始の状態にフィードバックし、


そこから再出発する方が、活き活きした生き方が生まれるのではなかろうか。自分の持


っている力を発揮できなくなった人間には、特にこういう、全身を叩きつけ、全力で生


ることが必要だと私は思うのであります。


 ある作家が、整体協会に入会したら、友人に「お前までもが無知蒙昧な野蛮人の仲間入


りをしたのか」といわれたそうですが、無知蒙昧は別として、野蛮人の体力を持つよう


になることは我々の欲していることです。野蛮人の体力を得て今日の文明生活を見直す


ことが現代の人々にはことに必要なことでありましょう。


以上、引用終わり


この本は1968年に東都書房より刊行されたものですが、野口先生は1956年には


治療を捨て、自分で自分の力を発揮するための整体を広めるために「社団法人整体


協会」を設立されています。およそ60年も前から、こういうことに着目されておられた


のです。


なんだか、今日の自分たちに語られているかのように思えるのはゆにちゃんだけでしょ


うか? 



もし、野口先生の著書に興味のある方は㈱全生社というところで購入できますよ。


一度、検索してみてくださいね!


ちくま文庫より「整体入門」というのが出版されていますが、初心者なら「健康生活の


原理」がおすすめです。