
日本の芸能界で「アイドル」と呼ばれた男性は、たぶん新御三家の3人が最初だろう。それまでのスターという呼称よりももっと身近なイメージなので、アイドル。写真のレコジャケは、その代表アイドル 西城秀樹18枚目のシングル「若き獅子たち」である。1976年の秋、この曲を初めて聴いた時、すごく驚いたことを憶えている。それまで、どちらかと言えば派手なアクションで絶叫していた彼が、切ないバラードを歌い上げるなんて想像もしなかったからだ。同じ年の12月に出した次の曲「ラストシーン」もまたバラードだった。日本中が「およげ!たいやきくん」で沸きかえっていた今から39年前、秀樹は21歳。阿久悠の歌詞にリズムが絶妙にマッチし、21歳という年齢を超えて、そのバラードは私に大人の色気を感じさせた。それから幾星霜、そんな昭和のアイドルも、今年還暦を迎えた。若さと笑顔のアイドルもいいけれど、年齢を重ねた渋いアイドルもまた、いい。先日、「還暦」のステージで歌う西城秀樹を観て、そう思った。苦しいリハビリを続けた成果ではあろうけれど、声が届く。絶叫しなくても、その歌声がこちらの心に響いてくるのは、若い頃からバラードを歌ってきたからに違いない。苦難を乗り越えた大人のアイドルの姿に、 今こそ私は 「若き獅子たち」を見たような気がした。

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