
フォークグループ アリスの存在を知ったのは、1972年。「明日への讃歌」という、どちらかと言えば女性っぽい感じの優しい曲だったけれど、ヒットした印象はなかった。それよりも、「ヤングタウン」というラジオ番組のDJとして、アリスの谷村新司は人気を博していた。フォークソングが下火になり始めていた頃、話術の面白さだけでチンペイとベーやん、つまりアリスは生き残っていたように見えた。時代の音楽はユーミンへと移行し、フォークの旋律もすっかり影を潜めた77年。ジュリーの「勝手にしやがれ」が大ヒット、歌謡曲が最高潮の盛り上がりを見せていた頃だった。写真のレコジャケ「冬の稲妻」が登場したのは。この曲を聴いた時の印象は、これはフォークソングではない。ドラムが入っているけれど、詞やメロディはロックでもない。それが、ニューミュージックという領域を生んだのかもしれない。78年「ジョニーの子守唄」、「チャンピオン」と大ヒットは続き、アリスは不動の地位を歌謡界に確立した。「チャンピオン」に至っては、もはやニューミュージックかどうかさえ、その線引は危うかった。しかし、アリスにとってそんなジャンルなど、どうでもよかったのだろう。後の「いい日旅立ち」や「昴」を聴いて、ジャンルなんて関係なく、いい曲はいいと思わせる。ジャンルを問わない。それが、アリスの残した足跡なのかもしれない。今年ももうすぐ、「冬の稲妻」が到来する。
