
今年の夏は短かった。猛暑続きの夏も辛いけれど、豪雨と竜巻ばかりですぐに逃げ去る夏はもっと憎らしい。きっとビールの売り上げにも影響しただろう。なんてビアジョッキを傾けていて、ふとあることに気づいた。お米屋にケースで注文していた時代は瓶ビールが主役だったのに、今や家庭でも缶ビール。定食屋か商店街の片隅にあるようなラーメン屋にでも行かない限り、瓶ビールを見ることはほとんどない。従って、写真のような栓抜きを必要とする機会もなくなったのだ。キリンビールと書かれた景品の栓抜き。かつては、どこの家庭にも1つや2つはあったこんな栓抜きを見ていると、昭和の夕食前の光景が浮かんでくる。父がいて、テーブルにはピーナッツとジョッキ。そこに瓶ビール1本と栓抜きが登場するのである。なぜか栓を抜きたくて、栓抜き役を買って出る子供たち。カンカンとビールの王冠をたたいてから、シュポンと栓を抜く。父親がうまそうにビールを飲む夏の光景に、あの時代の幸せな光景を見ていたのかもしれない。キリンビールの麒麟マークには、「キ」「リ」「ン」の文字が隠れていて、それを探し出せた夏、少年は日焼けした顔とともに少し逞しくなっていったのだ。
