
60年代に訪れたマイカーブームは、当時の私の家にもやって来た。親父がホンダN360を買ったのが1967年。まだガレージともいえないスペースに、その自慢の一台は入庫された。舗装されていない道路に置かれた新車は、どこかぎこちなかったのを憶えている。時代がファミリーカーを目指す中、異彩を放っていたクルマと言えばやはりスカイライン2000GTなのだ。写真のモデル(左)は、65年のスカイライン2000GT-Bタイプ。後にプリンススカイラインと呼ばれたけれど、この頃のスカGはまだ丸みがあって4ドアの分、優しいイメージもあった。写真(右)は、69年のいすずベレット1600GTR。日本のアルファ・ロメオと評価されつつも、いつしか消えていった。60年代から70年代にかけて、消えた幻の名車はたくさんある。ギャランFTOとGTO、ランサーGSR、初代カローラレビン、スプリンタートレノ、サバンナ、シルビア、バイオレット、スターレット、さらにスズキフロンテ、ホンダZ、コスモスポーツに117クーペ・・。全ては時代の要請で誕生し、進化とともに役目を終える。「山並みと青空を区切る稜線」という意味のスカイラインは、まだ進化を続けているけれど、今では「社会の過去と今日を区切る稜線」として、どこか終わりのない道を疾走しているような、私にはそんな気がする。
