
時は、1970年少し前。こんな自転車に颯爽とまたがる姿を、私もワクワクしながら夢見ていた。写真の広告は、マンガ雑誌によく掲載されていた、富士自転車のエスパトロン5。「赤い血潮のフラッシャー」といういさましいキャッチコピーでもわかるように、光が流れる方向指示器付きの自転車なのだ。ただし、方向指示器とは呼ばずにフラッシャーと名乗った所が凄かった。5段階変速ギア付き、セミドロップハンドル、流れるフラッシャー・・・買ってもらった友達のこの自慢のスペックに男子はもう興奮。次は自分の番だと親にせがんだのを思い出す。富士の他なら、ブリジストン、ナショナル、ミヤタ、マルイシといったメーカーが人気で、当時の価格で約50,000円。もはや子供のおもちゃではない。なかなか買ってはもらえないがゆえに、少年の羨望の的だった。まだ、仮面ライダーがTVに登場する前だったにもかかわらず、あんなにも迫力の自転車が流行ったのは不思議だ。 だけれど、「バイバイ」と別れた友達のフラッシャーの光の流れに、希望の色が見えたような気もする。未来への道筋を、あの頃、あのフラッシャーが指示してくれたのかもしれない。
