
もはや、何の説明も要らないだろう。TV「スター誕生」から生まれた二人は、ひとつの時代を鮮やかに演じ、そして輝き放った。デビューは1976年だけれど、写真のファーストアルバム「ペッパー警部」が出たのは、翌年だった。私の勝手な思い込みで言えば、ピンク・レディーがいちばん輝いたのは、その1977年だと思う。今から35年前の夏。個人的な想い出を語れば、その夏北海道にツーリングに出かけたのはいいけれど、運悪く有珠山が噴火。降る火山灰で途方に暮れていた時、カーラジオから流れてきたのが、ピンク・レディーの「渚のシンドバッド」だった。♪セクシー、あなたはセクシー、私はイチコロでダウンよ もうあなたにあなたに溺れる♪という過激な歌詞も彼女たちが口ずさむと妙にスンナリと胸に飛び込んできて、前向きになれたのを憶えている。まだウォークマンが世に出る前、海辺や繁華街から聴こえるラジオやカセットの音楽が、人気サウンドのバロメーターだった頃。日本国中のビーチは、「渚のシンドバッド」であふれた。同じ夏、キャンディーズは「暑中お見舞い申し上げます」を歌い、桜田淳子は「気まぐれヴィーナス」で応戦。むせかえるような夏の暑さが、青春の熱さと重なって、私の心にもかげろうが立ち登っていた。
