
かつて、花の中三トリオと呼ばれたその一人。TV番組「スター誕生」から生まれた初代スターが森昌子だ。写真のレコジャケは3曲目の1973年のヒット曲、自身そのまんまの「中学三年生」。♪別れの季節の悲しみを生まれて初めて知りました・・・私も中学三年生♪ と歌い上げる歌唱力は、トリオの中だけではなく、当時の歌謡界でも群を抜いていた。追いかけてスターの座についた桜田淳子と山口百恵のオーラの、どこか陰に隠れてしまった感もあるけれど、森昌子がデビューした72年の熾烈な闘いを、私は忘れてはいない。最優秀新人賞は「せんせい」の森昌子と、「雨」の三善英史の一騎打ちと、もっぱらの前評判だった。ところがそこに人気の郷ひろみが加わり、決選へと発展する。三つ巴戦と固唾を飲んでいたその時、レコードセールスの上昇という数字の裏付けから急浮上したアイドルが現れ、結果「芽ばえ」の麻丘めぐみの大逆転勝利となったのである。予想に反したこのデッドヒートで、72年の「日本レコード大賞」は視聴率が46%を超えた。もちろん、史上初。この年から、黄金のレコード大賞時代が幕を開けたのだ。72年の大賞は「喝采」。他にも和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」や山本リンダの「どうにもとまらない」、天地真理の「ひとりじゃないの」等、話題曲に溢れた。歌謡曲が最も華やかだったこの頃を、森昌子を見るたび、ふと思い出す。
