
子供の頃「ハリス」のガムはロッテより人気があった。いつの頃かカネボウに吸収されて、その名は消えてしまったけれど、今でも時々甘い記憶が口の中に広がってくる。写真の雑誌広告は、1971年頃、爆発的に売れていた「ハリスチューイングBON」。BONはフランス語でGood、それはキャンディでコーティングされた四角いガムだった。飴とガムで二度おいしい、そんな新食感を子供が見逃すはずはない。発売当初は赤いパッケージのペバーミント味と緑の青リンゴ味の2タイプ。ご覧の通り、広告には野口五郎が起用されていた。当時大人気のアイドルだからではあるけれど、ガムになぜ五郎なのか? 推測するに、71年の大ヒット曲が「青いリンゴ」だったからだと思うのは、あながち間違いでもないだろう。あの頃の野口五郎には、どこかクールな、それでいて多感な春を連想させる「青」のイメージがあった。「青いリンゴ」のあと、5曲目も「青い日曜日」という曲を歌っている。フレッシュな青リンゴの香りと、五郎のイメージは見事にマッチしていたのだ。BONは3つ目の味としてレモン味を発売し、さらにファンを広げていたと思ったけれど、間もなくスーパーの棚から商品は消えていった。丁度、青のイメージを卒業した野口五郎が、「オレンジの雨」を歌い始めた頃と時を重ねるように・・。青い思い出は、いつも甘酸っぱい。
