
ヒーローと呼ぶには愛嬌があり過ぎるかもしれないけれど、あの頃、オバQはまぎれもなく我が家のヒーローだった。1965年、TBS系の「不二家の時間」で始まったオバケのQ太郎は、あまりにも滑稽で、ドジで、それでいて愛くるしかった。日曜7時半は、TVの前の定位置を兄弟で争いながら、オバQに夢中。そしてもうひとつ、夢中になったのが不二家のお菓子だ。その当時としては、不二家はかなり高級で、CMを観てはポカンと口を開けていた。人気の「バラソルチョコレート」なんて、あっと言う間に食べ終わるのに、高い。子供心に「これ買って」とは、なかなか言い出せなかったのを憶えている。それなのに、「オバQ音頭」のソノシートだけはどうにも欲しくて。不二家のハイカップの王冠を集めて送るともらえたのだけど、やっぱり買ってもらえない。そこで私は、親戚たちに、お中元くれるなら「不二家のハイカップにしておくれ」と、厚かましいお願いをしたようだ。その甲斐あって、オバQ音頭は我が手の中に。子供の一念て、凄い。その後も、シャンプーに消しゴム・・。オバQの姿をしたものなら何でも揃えて、我が家はオバQだらけになってしまった。どこの家庭にも「オバケ」がいた時代、それはそれでほほえましい。
