まるでスローモーションのようだった。
手元から離れてから、粉々に砕けるまでの一瞬。一瞬のはずなのに、やけにゆっくりに感じた。落ちていく様子があまりに鮮明に見え、鮮明すぎるが故にみとれてしまったのだ。手を伸ばせば間に合ったかもしれないのに。
落ちていくものの、あの美しさはなんだろう。手元にある時は、そんな風に感じてはいないのに。壊れてしまえばもう二度と元には戻らない。それがわかっているから、それを最も意識する瞬間、それを突き付けられるが故に美しく見えるのだろうか。

そう、元には戻らないのだ。欠片を拾い集めたところでどうにもならない。欠片は、やはり欠片でしかない。例え、継ぎ接ぎで元の形を取り戻すことができても、元々のものとは別物なのだ。
形あるものもないものも、無常だ。今あるものを認め、移り変わりを受け入れ、自身も移ろっていく。欠片を掻き集め嘆くこともあるが、分かっている。そういうものなのだから。