安定した生活は落ち着かない。女としての幸せを求めてはいけない。
私のこの破滅衝動はどこからきているのか。それを考える度に、浮かんでくる顔がある。
二十歳の頃に付き合っていた男だ。一回りも年上の男。ものすごく仕事ができるわけでも、格別顔がよかったわけでもない。ただ、親しみやすい相手であったようには思う。上京してきたばかりで、かつ年上の男性に免疫のなかった私には、頼りがいのある男として映ったのだろうか。あの頃の自分の気持ちはよく覚えていない。
自分の気持ちだけではない。その頃何をしていたか、どんなことがあったかということすらあまり思い出せない。人は忘れることで自分の精神を守っているという話を聞いたことがある。忘れなければ立ち行かない記憶もあるのだ。この男が、私の記憶に蓋をしているに違いない。
覚えていることといえば、「なんか面白いことねえかな」が口癖で、仕事以外の時間はパチンコか 酒。暇さえあればパチンコ屋に入り浸っていた。酒もそんなに強くはない。他にやることもやりたいこともないから、そうして時間を埋めていたのだろう。そして、酒を飲んでは年下の後輩に仕事とは何たるかを懇々と語り、職場では先輩にヘラヘラするばかりで意見も言えない。いや、後輩の男の子たちとは仲が良かったような覚えもあるし、悪いところばかりではなかったはずだ。私だって好意をもっていたわけだし。しかし、その良いところは何一つ思い出せない。
典型的なダメ男。むしろこれくらいの男ならざらにいるだろう。私にとって最悪だったのは、私の夢を壊そうとしたことだ。そのせいで、私は一度死んだのだから。
私のこの破滅衝動はどこからきているのか。それを考える度に、浮かんでくる顔がある。
二十歳の頃に付き合っていた男だ。一回りも年上の男。ものすごく仕事ができるわけでも、格別顔がよかったわけでもない。ただ、親しみやすい相手であったようには思う。上京してきたばかりで、かつ年上の男性に免疫のなかった私には、頼りがいのある男として映ったのだろうか。あの頃の自分の気持ちはよく覚えていない。
自分の気持ちだけではない。その頃何をしていたか、どんなことがあったかということすらあまり思い出せない。人は忘れることで自分の精神を守っているという話を聞いたことがある。忘れなければ立ち行かない記憶もあるのだ。この男が、私の記憶に蓋をしているに違いない。
覚えていることといえば、「なんか面白いことねえかな」が口癖で、仕事以外の時間はパチンコか 酒。暇さえあればパチンコ屋に入り浸っていた。酒もそんなに強くはない。他にやることもやりたいこともないから、そうして時間を埋めていたのだろう。そして、酒を飲んでは年下の後輩に仕事とは何たるかを懇々と語り、職場では先輩にヘラヘラするばかりで意見も言えない。いや、後輩の男の子たちとは仲が良かったような覚えもあるし、悪いところばかりではなかったはずだ。私だって好意をもっていたわけだし。しかし、その良いところは何一つ思い出せない。
典型的なダメ男。むしろこれくらいの男ならざらにいるだろう。私にとって最悪だったのは、私の夢を壊そうとしたことだ。そのせいで、私は一度死んだのだから。