2ch オシロスコープの X軸・Y軸入力に正弦波信号を入れると、その周波数や位相の違いに応じてリサージュ図形を表示することができます。
私は音楽録音現場に出入りしていましたので、録音スタジオでこの 2ch オシロスコープをよく見かけました。
ステレオ信号をこれでモニターして、音像の広がり具合をチェックするわけです。

今回は、このリサージュ図形を Excelで描いてみようという試みです。

(1) 2つの正弦波

2つの正弦波信号 S1、S2を定義します。
下図の A1セルに S1を表わす数式を表記しておき、その振幅 A1、周波数 f1、初期位相θ1をそれぞれ B2、B3、B4セルに入力します。

同様に、A6セルに S2を表わす数式を表記、その振幅 A2、周波数 f2、初期位相θ2をそれぞれ B7、B8、B9セルに入力します。

時間パラメータ t (sec)に対する S1、S2信号を D~F列に計算させます。
例えば E2セルには「=$B$2*SIN(2*PI()*$B$3*D2+$B$4)」、F2セルには「=$B$7*SIN(2*PI()*$B$8*D2+$B$9)」と入力し、以下、適当な長さ迄コピーします。

そして、この数列が例えば 101行あれば、E2~F102セル範囲を選択し、[挿入]-[グラフ]-[散布図(直線とマーカー)]をクリックすると、リサージュ図形が描かれます。(下図)

 

上図は、振幅 A、周波数 fは同じで、位相差⊿θ=π/4であるときのリサージュ図形です。
この位相差⊿θをいくつか変えてみると、リサージュ図形も下図のように変化します。

 

ちなみに、周波数 f1を f2の半分にして、初期位相θ1=0、θ2=π/4 として描画すると、Meta社のロゴのようなリサージュ図形となります。(下図)

 

(2) ステレオ音楽信号

音楽CDから楽曲の一部を取出して、その 2ch 信号でリサージュ図形を描いてみます。
音楽CDはサンプリング周波数 44.1kHz、16bit、2chの WAVデータが記録されています。
今回は、そのうちの 1秒間だけを取出しました。
音楽波形の切り出しには「SoundEngine Free」を使い、切り出した 1秒分の WAVデータを「wav2csv.exe」を使って CSVデータに変換しました。
いずれもフリーソフトですが、これらに限らず音楽データを Excel上に取り込めれば他のアプリでもちろん構いません。

A列に Lch信号、B列に Rch信号を取り込みました。
このままプロットしてもよいですが、スケールを正規化するために値を 32,768 で割ってC列・D列に格納しています。(下図)

 

これを [挿入]-[グラフ]-[散布図]でプロットしました。
ここでは [散布図(直線とマーカー)]ではなく [散布図]としました。

このリサージュ図形をみると、全体として斜め 45°に傾いていますので、Lchと Rchとが“同相”、つまりモノーラル信号のようにセンター定位しており、その 45°線を中心に広がりをもって分布していることが分かります。
この広がりがステレオ再生時の広がりに関係しています。
この広がりがもっと膨らんでいくと、残響が多く、全体としてボヤけた音像となります。

いかがでしょうか。
理工系の方や音楽録音エンジニアでないとあまり目にしなくなってしまったリサージュ図形ですが、生の 2ch 信号を観測するときに役立ちます。
ただし、Excelでは(プログラムを書かない限りは)リアルタイムで描けません。