トップの画像は人気ワークウェアブランドTS DESIGN、機能性満載の新商品「TS 4Dジャケット」
特に全方向に伸びるストレッチと汚れが落ちやすい防汚加工が大きな特徴ですが、なぜ汚れが落ちやすいのか?そして何と比べて落ちやすいのか?
今回はそんな防汚加工についてのお話です。
汚れに対する3つのアプローチ
紡績メーカーでそれぞれ手法や仕組みに違いはありますが、繊維の汚れに対するアプローチは以下の3つに大別できます。
- 汚れを寄せつけない SG(ソイルガード)
- 汚れを落ちやすくする SR(ソイルリリース)
- 汚れを目立たなくする SH(ソイルハイド)
1.汚れを寄せ付けない SG(ソイルガード)
防汚加工で最もポピュラーな手法が繊維に汚れをつかないようにするSG(ソイルガード)です。糸や生地の表面にフッ素樹脂などをコーティングして、汚れを弾き付着しないようにします。フライパンでお馴染みの「テフロン加工」が有名ですね。最近よく耳にする「撥水加工」もSGの仲間で、SOIL(土汚れ)をGUARD(防ぐ)ことからSG(ソイルガード)と呼ばれています。
2.汚れを落ちやすくする SR(ソイルリリース)
SR(ソイルリリース)はその名の通りついた汚れを落ちやすくする加工です。本来、汚れがつかなければ一番良いのですが、汚れを防ぐための防汚加工であるSG(ソイルガード)はコーティングであるがゆえ、洗濯などを繰り返すことでどうしても劣化して効果が弱くなっていきます。また汚れが多い職場環境だと防いでも防ぎきれない場合もありますので、防ぐことは諦め、その代わりついた汚れを落ちやすくしようという考え方がSR(ソイルリリース)です。
2-1 水が染み込まない化学繊維ポリエステル糸
一度ついてしまった汚れを落ちやすくするためには水の力が不可欠です。そして、その水が生地に馴染めば馴染むほど汚れが落ちやすくなりますが、ひとつ大きな問題があります。現在、衣料で幅広く使われているスタンダード素材「ポリエステル糸」には親水性が全くありません。「え?ポリエステルのTシャツ着てるけどちゃんと濡れるじゃん」と言う方もいると思いますが、それは糸が濡れているのではなく、ポリエステル糸を織って作られた「生地」が水を含んでいる状態。もしくはポリエステル80%綿20%のような混紡素材の綿が濡れている状態のいずれかで、ポリエステル糸自体に水は染み込んでいないのです。
2-2 ポリエステル糸はPET樹脂
化学繊維であるポリエステルは簡単にいうと皆さんお馴染みのペットボトルと同じ素材です。PETとはポリエチレン・テレフタレートの頭文字をとった略称で、衣類で使われているポリエステルも呼び方が違うだけで同じポリエチレン・テレフタレートです。つまりペットボトルと同じ素材を細く長く糸のように加工しているものがポリエステル糸なのですが、こう言われるとポリエステル糸が全く水を含まないことがカンタンに理解できるかと思います。水の染みるペットボトルなんてありえないですからね。
2-3特殊な技術で糸の表面に親水性を持たせたSR加工「マーバスL」
つまりコットンなど、水が染み込む天然繊維に比べてポリエステルには一度ついた汚れが落ちにくい性質があり、だからこそ汚れを寄せ付けない防汚加工SG(ソイルガード)が主流となっているのですが、トップでご紹介したTS 4Dジャケットに採用されたSR加工「マーバスL」はそんなポリエステル糸の表面に特殊な技術で水が染みる層を作ることに成功した画期的な素材。「水が染みないのなら水が染み込む層を作ってしまえ」という簡単な発想を非常に難しい技術で実現しています。
【参考】リクシル(INAX) アクアセラミック
3.汚れを目立たなくする SH(ソイルハイド)
SH(ソイルハイド)は防汚加工3つのアプローチの中で最もマイナーな存在で、繊維の断面構造を利用し、光の反射などで汚れを目立たなくする手法。カーペットやカーテンなので多く使われていましたが、現在ではSG(ソイルガード)の発達であまり見かけることがなくなりました。例えばオックスフォードのような織りが目立つ素材だと汚れが目立たないのはSH(ソイルハイド)効果によるもので、反対に光沢のある凸凹が少ない素材は汚れが目立ちやすい傾向にあることは皆さんも良くご存知ではないでしょうか。
まとめ
SR(ソイルリリース)の汚れが落ちやすいという特性は、あくまで他のポリエステルに比べて汚れが落ちやすいということで、もともと親水性を持つ綿などと比べたものではありません。よって、今まで綿100%、あるいは綿とポリエステルの混紡のウェアを着ていた方が、今まで以上の汚れ落ちを期待してもガッカリしてしまうでしょう。そもそもSR(ソイルリリース)加工が施されたウェアはポリエステルの良さである「速乾性」や「形崩れのしにくさ」、「ストレッチ性」など、綿のような天然繊維にはマネできないメリットを活かしつつ、ウイークポイントである「汚れの落ちにくさ」を解消することが目的であることを理解しておく必要があるのではないでしょうか。せっかく着るなら自分の環境にあったものを買いたいですからね。