エセ化学者の理科の学校 -5ページ目

筋肉の作り方 (筋肉の栄養源 その1)

今日から筋肉の栄養源について解説していきます。

自動車を走らせるとき、ガソリンを使いますよね。(最近は電気だという方もいますが‥)筋肉も同じで、筋肉を動かすための栄養源が必要です。

 筋肉細胞の栄養源は、基本的には糖分です。中でもブドウ糖、果糖は最もエネルギーに変えやすい分子構造をしています。砂糖はショ糖といって、ブドウ糖と果糖が化学的にくっついた形(縮合)をしていて、体内に入ったときにブドウ糖と果糖に分解されるわけです。

 またご存知とおり、ゴハンやパンに含まれる炭水化物(デンプン)が消化酵素で分解されても糖分となります

 では、筋肉細胞が使うこの糖分は我々の体のどこから来るのでしょう?ゴハンや甘いお菓子を食べれば、糖分として吸収されて、栄養源になり得ますが、この糖分が体内に過剰にあるときは、糖分子を紐のようにくっつけたような形を持つグリコーゲンとして蓄えることができるんです。グリコーゲンは筋肉の中でも少量作り、蓄えることができますが、おもにその合成は肝臓で行われ、蓄えられえています。

 そして、筋肉の運動が始まるとこれを分解しながら糖分として血液中に放出するわけですね。

筋肉の作り方 (筋肉の構成 その3)

前々回、速筋と遅筋の存在比率は、生まれながらに決まっていて(遺伝)、遅筋も訓練することによって、速筋に相当するようなタイプの遅筋に変えることができる。そして、瞬発力に富んだ人は生まれながらにいますが、そうでない人も訓練によって瞬発力が出てくると説明しました。

 それでは、その逆はどうなんでしょうか?

速筋に富んだ人は、持久力を鍛えてもしょうがないのでしょうか?

実はこれも人間の適応性が優れていて、速筋に富んだ人もマラソンなどの持久力を鍛える運動で、速筋の一部が遅筋に近い性質に変わることがわかっています。また、最近の研究では、速筋と遅筋の他に中間筋というものが存在して、自分が行う運動に適した筋肉に姿を変えるということがわかっています。人間の順応性もバカにできません。

 次回からは、いよいよこの筋肉と栄養について解説していきます。


うちにも柔道少年がいますが、体が小さく、持っている知識をなかなか実践できない状態です。親の責任ですな‥。

筋肉の作り方 (筋肉の構成 その2)

昨日は筋肉の種類について解説しましたが、今日はその補足です。

筋肉には骨に付随する骨格筋、内臓を構成する内臓筋、心臓を構成する心臓筋(心筋)があり、骨格筋だけが自分の意思で動かすことができ、後者2つは自分の意思に関係なく動くと解説しました。

 この自分の意思で動かせるかどうかで分類したとき、骨格筋は随意筋、内臓筋、心臓筋は不随意筋と呼ばれます。

 また、骨格筋を顕微鏡で見ると、速筋(白筋)と遅筋(赤筋)が入り組んで紋のように見えることから、横紋筋(おうもんきん)と呼ばれることもあります。これに対し内臓筋は平らな細胞で構成されるため、平滑筋(へいかつきん)と呼ばれます。

 この速筋(白筋)と遅筋(赤筋)の身近な例を魚類に見ることができます。(たんぱく質の構成も似ているのだと思います。)

 魚の種類に、白身魚、赤身などがありますが、これがそのまま速筋(白筋)と遅筋(赤筋)に相当するようです。たとえば白身魚ではヒラメ、ムツ、カレイなどは速筋(白筋)で構成されており、敵に襲われそうになったとき、すばやく逃げることができます。しかしこのすばやい泳ぎは持久力を持っていません。

 これに対し、マグロなどは敵から襲われる危険性が少ないので、すばやく逃げる必要はないのですが、マグロはエラを動かすことができないため、新鮮な海水を取り込むために死ぬまで一生泳ぎ続けなければなりません。このため筋肉は持久力が必要で、マグロは赤身で構成されているということです。

 

筋肉の作り方 (筋肉の構成 その1) 

人体に関する話は化学から外れるため、私の守備範囲ではないのですが、アスリートを育成するための科学として、正しい筋肉の作り方と題して、解説していきたいと思います。

先ず、初回は筋肉の構成からはじめます。


 我々人間の筋肉は骨格筋、内臓筋、心臓筋の3つに分かれます。内臓筋、心臓筋は我々の意思とは無関係に動き、疲労しません(疲労しては困りますが‥)
 通常、筋肉といえば、骨に付随する骨格筋を指します。
さて、この骨格筋の構成は、基本的に2種類あって、速筋と遅筋の2種類から構成されています。この字のとおり、この2種類の筋肉の性質は全く異なります。

 速筋は白みを帯びており(この色から白筋と呼ばれることもあります)、瞬発力を司るような速い動きに即した筋肉です。
 一方、遅筋は赤みを帯び(この色から赤筋と呼ばれることもあります)本来、瞬発力よりも持久力を司る筋肉です。
実はこの2つの筋肉の存在比率は、生まれながらに決まっていて(遺伝)、一生変わることはありません。それでは、遅筋の多い人は一生瞬発力がないまま終わるのかというと、そうではありません。遅筋も訓練することによって、速筋に相当するようなタイプの遅筋に変えることができるんです。
つまり、瞬発力に富んだ人は生まれながらにいますが、そうでない人も訓練によって瞬発力が出てくるということです。努力すれば報われるわけですね。

また、ぼちぼち再開します!

大分長い間、お休みをいただきました。

実は半年ほど前に研究所の職を離れ、本社企画部の勤務となりました。

ですので、事実上現役の化学者ではなくなったわけで、今は本当の「エセ化学者」を名乗ることができると自負しています。

本社の仕事は、お金の話、法律の話、外国人の接待が特に多く、今までと180度違う環境となりましたが、自分の見聞を広めるには最適と考えています。(この年では少ししんどいですがね。)

こらからまた、身近な話を科学的に説明してゆきたいと思います。

改めてよろしくお願いいたします。


センター試験直前講習 おまじない

さて、化学Ⅰの直前講習をしてきましたが、最後に試験時のおまじないです。


試験が始まったら、問題をざっと見回し、まず小さな元素周期表を書いて見ましょう。

「すいへーりーべ、ボクノフネ、なーにマガアルシップはすぐくらぁ」(原子番号1から18までの記憶法)

元素はここまでで十分です。


周期表は化学の最高法典。原子の手の数がわからなくなったら、これを見ましょう。

一番左の列の原子(H, Li, Na)は手が一本

左から2番目の列は手が2本(Be, Mg)

右から2番目の列の手は一本(F, Cl) などなど。


そして、気体の状態方程式を書きましょう。


pV = nRT


これを使わないときもありますが、気体の問題は試験の常連ですから‥

これを変形させると、ボイルの法則、シャルルの法則、ボイルシャルルの法則全てが出てきますよ。


問題はできる問題、簡単と感じる問題からやりましょう。

わからない問題は後回し。時間は必ず余ります。

全くできそうにない問題でも、ある程度選択肢は絞れるはずです。


それでは GOOD LUCK !!

センター試験直前講習(その5)

問題を続けます。


0.1mol/l の硝酸鉛(Ⅱ)水溶液 300ml に、0.2mol/l の硫酸 100ml を加えると、硫酸鉛(Ⅱ)が沈殿した。沈殿をろ過してから、ろ液に純水を加え、溶液の体積を 500ml にした。次の記述のうち、正しいものを1つ選べ。

①溶液には未反応の硫酸が 0.01mol 残っている。

②溶液のpHは、7より大きい。

③溶液中の硝酸濃度は、0.04mol/l である。

④沈殿した硫酸鉛(Ⅱ)は、0.04mol である。

⑤溶液中に残っている鉛(Ⅱ)イオンの濃度は、0.02mol/l である。


 まず、どのような反応が起こるのか、式を立てて見ます。


Pb(NO3)2 + H2SO4 → PbSO4 + 2HNO3 となります。


さて、次に化学量論的な考えに移ります。実際に存在するモル数を計算してみましょう。(体積の単位はリットルに統一します)

反応前の硝酸鉛(Ⅱ)は、0.1 × 0.3 = 0.03 mol

硫酸は、 0.2 × 0.1 = 0.02 mol

つまり、硝酸鉛の方が過剰で、硫酸は全て硫酸鉛に変わることになります。よって、生じる硫酸鉛のモル数は、加えた硫酸のモル数に等しく、0.02mol、

また、この倍の硝酸を生じることになります。

硝酸のモル数 0.04mol

また、この中には、未反応の硝酸鉛が 0.01mol 存在します。


ここで、問題をチョッと見てみます。

この段階で未反応の硫酸はありませんから、①は間違い。系には硝酸が生じてますので、pHが7より大きくなることはありません。よって②も間違い。沈殿した硫酸鉛は、0.02molですから④も間違いです。

残りは③と⑤になりました。ここで硝酸濃度と鉛イオン濃度を計算してみます。


沈殿を除いたあとに、500mlとしてますので、濃度を求めるには、0.5で割ってあげればよいわけです。

硝酸は0.04molでしたから、濃度は

0.04 ÷ 0.5 = 0.08mol/l (③は間違い!)

鉛イオンは硝酸鉛が電離したもので、一モルの硝酸鉛が電離したときには、1モルの鉛イオンを生じますので、鉛イオンの濃度は硝酸鉛の濃度と一致します。よって、

0.01 ÷ 0.5 = 0.02 mol/l で、問題の正解は⑤となります。


こういう問題は見ただけでイヤになる人もいますが、最初に式を立てることさえできれば、あとは小学校の算数だけです。また、計算がある程度できると、問題の選択肢が絞られてくるので、あわてずに整理するのがコツですよ。

センター試験直前講習(その4)

問題)

安息香酸エチルエステル(安息香酸エチル)を含むニトロベンゼンがある。これからニトロベンゼンのみを取り出したい。以下の操作で、ニトロベンゼンは①~④のどの部分に最も多く含まれているか?


①過剰の水酸化ナトリウム水溶液でけん化した後の水酸化ナトリウム水溶液の部分

②過剰の水酸化ナトリウム水溶液でけん化した後の水酸化ナトリウム水溶液に不溶の部分

③スズと過剰の塩酸で還元した後の塩酸溶液の部分

④スズと過剰の塩酸で還元した後の塩酸に不溶の部分


過剰の水酸化ナトリウム水溶液でけん化 というのは、エステルを加水分解し、得られたカルボン酸をカルボン酸ナトリウムに変える反応。つまり、ここでは安息香酸エステルが分解され、安息香酸ナトリウムになる反応である。ニトロベンゼンはけん化されることはなく、水酸化ナトリウム水溶液にも溶けないため、答えは②となる。

 因みに、スズと過剰の塩酸で還元されるのはニトロベンゼンで、アニリンとなり、過剰の塩酸で中和したアニリン塩酸塩となる。

 細かく分析すると、①に含まれるのは安息香酸ナトリウム、②に含まれるのはニトロベンゼン、③に含まれるのはアニリン塩酸塩、④に含まれるのは、安息香酸エチルである。

センター試験直前講習(その3)

問題を続けます。


次の記述のうちから、正しいものを2つ選べ。

①原子番号が7の原子はL殻に7個の電子をもつ。

②12Cと13Cの原子は、同じ電子配置をもつ。(数字は左肩で、質量数です)

③アルカリ金属の原子は、イオン化エネルギーが大きい。

④Li+、Na+、K+ のうちで、イオン半径の最も大きなものはLi+である。

⑤原子量が整数にならないのは、同素体が存在するからである。

⑥ハロゲン元素の原子は、電子を容易に受け入れて、一価の陰イオンになりやすい。


①原子番号7の元素はN(窒素)ですが、電子はL殻の内側にあるK核(最大2個収容)から埋まっていきます。ですから、L核の電子は5ことなります。

②原子番号の左側に書かれる情報は、陽子の数や、質量数などでこれらは原子核の情報で、電子とは関係ありません。つまり、元素記号が同じであれば、同じ電子配置となります。

イオン化エネルギーとは、一番外側の電子一個を奪い取るエネルギーを表しています。アルカリ金属の原子は最外殻電子が一個ありこれは容易にとることができ、安定なアルカリ金属イオンに変わります。よってアルカリ金属の原子のイオン化エネルギーは小さい値となります。

原子番号が増えると、より多くの電子を収容しなくてはならないため、イオン半径も大きくなります。よってLi+、Na+、K+ のうちで、イオン半径の最も大きなものはK+である。

原子量が整数にならないのは、同位体が存在するからです。同素体と、同位体の意味をもう一度確認しておきましょう

⑥ ③ではアルカリ金属が電子一個を奪い取るのが容易と解説しましたが、ハロゲン元素はこの逆で、一個の電子を受け入れて、安定な1価のイオンとなります


以上の解説より、正しいものは②と⑥です。


試験の直前では、あまり難しい問題を解くのではなく、簡単な問題を多く解いて最終確認をするのがよいでしょう。


センター試験直前講習(その2)

1)酸化物を水に溶かすと、塩基性を示すものは?

①炭素、②窒素、③リン、④硫黄、⑤カルシウム


まずこれらの酸化物が何であるか考えて見ましょう。

①炭素の酸化物は炭酸ガス(二酸化炭素)です。これを水に溶かすと炭酸水となり、弱酸性を示します。

②窒素の酸化物は二酸化窒素等で、水に溶かすと強い酸性を示す硝酸となります。

③リンの酸化物は、五酸化りん(無水リン酸)で水に溶かすと酸性を示します。

④硫黄の酸化物である三酸化硫黄を水に溶かすと硫酸となります。

⑤カルシウムの酸化物である酸化カルシウムを水に溶かすと水酸化カルシウムとなり弱い塩基性を示します。

ということで、答えは⑤カルシウムです。

カルシウムは周期表で左から2番目の行にあるアルカリ土類金属に属しますが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の名前の由来は酸化物の水溶液が塩基性を示したことによります。いわば、定義的な問題ですね。


2)塩酸にも、濃い水酸化ナトリウムの水溶液にも溶けるものは?

①黄燐、②硫黄、③鉄、④亜鉛、⑤銀

この酸とアルカリの両方に溶ける性質をもつ元素を両性金属元素といいます。解答候補のうち両性金属元素に該当するのは④亜鉛です。両性金属にはこのほか、アルミニウムを覚えておいてください。

③鉄、⑤銀は遷移金属元素、①黄燐、②硫黄は非金属元素となります。


3)水や酸素と反応しやすいので、石油の中に保存するのが適当なものは?

①炭素、②ナトリウム、③黄燐、④硫黄、⑤ヨウ素

このうち、①炭素、④硫黄、⑤ヨウ素は常温で水や酸素と反応することはありません。

ナトリウムは水や酸素と激しく反応するため、これを遮断するために石油中で保存します。

③の黄燐は酸素とは反応しますが、水とは反応しません。よって黄りんは水中で保存します

ということで、答えは②