父親を殺された少女が、その仇を討つために旅へ出る。
この構図だけで、すでにどこか私の思い描く古き良き合衆国のイメージが浮かんでくる。
きっと、今回は(オリジナルの段階からだが)登場人物の年齢構成がさらに助長しているに違いない。
少女(少年)と、その祖父母にあたるほど年齢の離れた「相棒」、そして父親の歳ほどの「兄貴分」といったアンバランスでいて均整のとれたチームワーク。
そこにコーエン兄弟によるシニカルでコミカルな脚本が、古風を今風に。
ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)は酒びたりで…
ラビーフ(マット・デイモン)は気障な割に頼りなく…
自らの目的はきっと高潔なものと信じてしまいがちな、荒野で生まれ育った少女にはある意味最も「必要」と振り返ることのできた仲間だったに違いない。
父の仇を討つことに成功したマティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)が、その直後に深い穴の中に落ち、そこにあった亡骸から出てきた蛇に咬まれる…
とても急展開のようで、何故か違和感がない。
荒野の男たちの<情>にやられたんだな、とつくづく感じた。
そこからエンドまで、一気にことが進むんだけど…
ここはとにかく素晴らしい。
下手な演出や台詞で誤魔化すこともなく…
父親の仇討ちの代償として猛毒を浴びた少女。
彼女をずっと見守り続け、命を賭して家へと送り返すために走る老人。
馬の背に乗っているときの疾走感は、少女の夢を走馬灯にかざし…
老人の背に乗る瞬間の怒りや悲しみは、いつの日か感謝の想いへとカタチを変え…
「25年という月日は長い」
<真の勇気>を知ってしまった彼女にとって、紛いもののそれを見ている時間はきっと何よりも長かったのだろう。

スタインベックの作品に通ずる、現代の物質文明と相反“しながら”光り輝く精神遺産がみて取れる。
アウトローとしての人生を宿命づけられた人間が、この世の中にはいるのだと確信させてくれる作品でもあったのではないか。
仇討ちの許されない社会に生きる者として、この手の作品に何を想い、何を感じるか。



















































































