木更津のアウトレットパークへ行った。


品川駅から高速バスで片道1200円、45分程の道のりであった。


新宿からでも1500円、1時間足らずと都心からのアクセスは良好である。



途中、アクアラインから東京湾越しの富士を臨む。


富士山と役所広司だけは、何度見ても見飽きない。


その時々で異なる表情を見せてくれる。




この名山も一万年前には2つの頂きを持つ双子山であったそうだ。


縄文人が見た富士はまだツインピークの山だったのである。


それはそれで美しい姿形だったろうが、やはりこの末広がりの独立峰の魅力が勝る。


ただし。


大地は生きている。


現在のこの富士も地球時間で言えば束の間の姿に過ぎない。


人も自然も、全て一期一会である。



木更津アウトレットは日本で最大級、約300店舗が軒を連ねる大型商業施設だ。


特に服飾関連の店が多い。


僕は数時間滞在し、色々な店に入ってみたのだが、何一つ買わなかった。


昼飯の親子丼にだけは金を使った。




子供の頃から、服にあまり興味がない。


役者というのは、自分しか商品がないのであるから、ある程度着飾ってしかるべきなのだが、どうにも積極的になれない。


まず、試着からして面倒だ。


ズボンに至っては裾上げ位置の調整が必要となる。


買ったら買ったで、今度はコーディネートを考えなければならない。


これでは銭を払って面倒な事に巻き込まれるようなものである。


しかし、活躍している役者達を見ると、やはり皆さんお洒落である。


稽古場へ来る際の私服から稽古着に至るまで、ある種のこだわりが感じられる。


僕も自分を「魅せる」術をもう少し学ぶべきなのかも知れない。


オシャレが出来る男になる。


そんな目標を立てようか。




帰りのバスには、紙袋をごってり提げた人々が乗り込んで来た。


皆一様に嬉しそうである。


服袋は福袋でもあるらしい。


僕も服で福を呼び込む一年に出来るだろうか。


茜色の空に浮かぶ富士は、朝よりもその輪郭を一層はっきりと濃くしていた。




駄文御免。