光源氏 22歳
父・桐壺帝が退位し、兄・朱雀帝が即位する。
新しい皇太子に藤壺の子が立ち、光源氏はその後見を任された
世代が変わり、この新しい体制は 光源氏にとって吉か凶か
今年の賀茂祭りは盛大で 光源氏もパレードに加わった
世にも美しい光源氏を見ようと、沢山の群集が押しかける中
ひっそりと息を潜めて 光源氏を窺う女人が・・・
六条御息所 29歳
光源氏の年上の情人 前皇太子妃 未亡人
高い知性と教養を兼ね備えた 才色兼備の女性だが
光源氏は いつしか彼女との恋が 重いものなっていた
次第に離れてゆく年下の恋人の姿を
一目みようと お忍びでパレード会場に来ていた・・
葵 26歳
光源氏の妻 今を時めく左大臣の娘
光源氏との仲は 相変わらず冷えていたが
それでも懐妊し
女官たちにせがまれで パレード見物にやってきた
パレード会場は群集で溢れかえっていたが
葵の部下の男達は 左大臣の威光をカサに来て
周りの牛車を無理矢理どかして 割り込んでいった
そこに お忍びの 貴婦人の牛車が・・・・
六条御息所
心が離れてゆく年下の恋人の姿を
未練がましく見に来た情けない姿を 衆人に晒され
光源氏の正妻の部下たちに 牛車を壊され
車よりも傷ついた御息所は
心から血が流れるような屈辱に苦しんでいた
それでも見苦しく誰かを責めることはなく
ただただ 闇の中での煩悶の日々
抑圧された感情は 闇の最も深い所で
別の顔を持ち 現れる・・・・
源氏物語前半のクライマックス・車争いのシーンですね
つれない恋人の姿を 一目見ようと押し伸びで来た御息所の車を
正妻の部下たちが 無理矢理どかして たたき壊す・・・
六条の御息所との馴れ初めは、描かれていませんが
当代イチの教養高い、身分の高い年上の恋人です
彼女にとってみれば
年下のモテ男くんが次第に離れてゆく不安
自分の何がいけないんだろう?
身分も教養も高い自分。 年上だからだろうか・・と悩むけれど
年下の恋人に 素直に甘えたりできないジレンマ
光源氏にしてみれば
年上の貴婦人にアタックしたものの
何も言わない でも雰囲気で独占しようとする年上の恋人が
ちょっと重くて気詰まり・・・といったカンジでしょうか
この時代では 感情的になることは、
見苦しいとされていますから
御息所も必死で感情を押し殺して 苦しさに耐えて鬱々としているうちに
抑圧された感情が 身体を抜け出してしまう・・・
残酷とは 形を変えて現れる
これは必然か 偶然かー
感情的になることを もっとも醜いとする我ら貴族
感情的になることをよしとする男達の争いも
黒い牛車の争いも
もとは 感情を露わせぬ女たちの争いが
姿を変えて 現れただけのこと
だがーー・・・
挿絵:「写真集 窯変源氏物語」より抜粋
この記事は 源氏物語を私風に意訳したものです。
簡潔編集を心がけておりますので、どうか大きな気持ちで お読みいただければと思います。
感想などいただけると めっちゃ喜びます。
長文おつきあい頂いて ありがとうございました!