南極と超深海の両極地で、実際に自分の手で水中ロボットを潜らせてきた研究者による「実話」をご紹介するブログ。

 

今回は、「水中ロボットによる災害支援」と、言うお話です。

 

水中ロボットは深海生物の調査や海底資源の調査、はたまた南極での生態系調査などさまざまな場面で活躍しており、撮影された映像や写真をテレビや新聞で目にする機会が多いかと思います。

↑ 鬼の形相で水中ロボットをあおる?魚

 

しかし、水中ロボットの活躍の場は研究調査に留まらず、防災や救助などでも活用されつつあります。

 

特に、近年では豪雨や津波による災害や船舶事故など、痛ましい海の事故が増えつつあります。

 

そんな災害や事故が発生した際に、いち早く現場に急行して救助や捜索活動が出来るように、水産高校では水中ロボットの製作、運用、メンテナンスを行える即応体制の構築を目指しています。

↑ 災害発生時の航路啓開

 

例えば、豪雨や津波で港に瓦礫が流れ込んでしまったり地震で港湾設備が破壊されたり液状化した場合、救援物資や医療設備を搭載した大型の船舶は浅瀬である港に入ることが出来ません。

 

また、重傷者を沖合の船舶にヘリで移送すると気圧の低下により容体が悪化することも予想されます。

 

そのため、いち早く救助や支援を開始するには、船舶が安全に航行できるコースラインを確保することが重要です。これを専門用語で航路啓開(こうろけいかい)と言います。

 

しかし、災害発生時には多くの船舶が被害を受けている可能性があり、さらに水中ロボットを運用できる人材も現場に急行できない可能性があります。

 

そこで、全国に都道府県にある水産高校に水中ロボットを配備し、日ごろから運用できる即応人材を育成することで、災害や事故発生時の早期支援を目指しています。

 

その取り組みが、鹿児島水産高校で行われた災害支援用の水中ロボット開発です。

 

 

この取り組みでは、水中ロボットの開発、運用、メンテナンスだけでなく、ロボットを投入する前に海底の様子を船上から確認するサイドスキャンソーナーと言う装置の運用についても訓練を行っています。

↑サイドスキャンソーナー運用の実地訓練

 

このソーナーの特徴は一般的な魚群探知機と違い、海底がとして見れるのが最大の特徴です。

↑ サイドスキャンソーナーの画面

 

そのため、魚群探知機よりも広範囲を探査することが可能です。さらに、細かな物まで見えるため船の航行に危険な物かの判断も容易にできます。

 

こうしたさまざまな海洋調査技術を組み合わせることで、迅速に災害支援や救助が行える体制の構築を目指しています。

↑ 防災用水中ロボットを興味津々で見る男の子

 

しかし、多くの人の「防災」への関心は、実際に災害や事故に直面しないと意識が向かないことが多く、国の予算なども後回しになっています。

 

災害や事故は予見が難しい事から、日ごろからの防災訓練や備えが重要です。

 

引き続き、社会の役に立つ水中機器の開発にも取り組んで参ります。