南極と超深海の両極地で、実際に自分の手で水中ロボットを潜らせてきた研究者による「実話」をご紹介するブログ。
今回は、「海のデータを使って自由研究をする」と、言うお話です。
普段、当研究室が行っているような海洋観測や海洋実験と聞くと、「何日も船の乗って調査に行くんだろうな」と言うイメージが湧きがちですが、実は陸上で出来る海洋観測もあります。
近年は人工衛星や海洋観測フロートの高性能化により、現場海域に行かなくても海洋データを取得することができます。
これを「リモートセンシング」と言います。
人工衛星は、天気予報などで画像を見ることがあると思いますが、意外と知られていないのが海洋観測フロートです。
その中でも有名なのがアルゴフロートと呼ばれる自動観測フロートで、全世界の海に約3800台が展開しています。
↑ アルゴフロートの外観写真
※展示用に外殻をアクリルに変更してある
大きさは1.2m程度で大人なら一人で持ち上げることが出来るくらいの重さです。
内部には自動の浮力調整装置を持っていて、海面から水深2000mまでの水温、塩分濃度を自動観測し、観測後は自動で海面まで浮いて人工衛星を使ってデータを陸上施設に送信します。
↑ アルゴフロートのシーケンス
10日に1回程度(運用者が任意で設定)の割合で観測を行い、概ね2~3年間は自動で観測をし続けます。
このアルゴ計画には、さまざまな国や地域が参加しており、日本では気象庁を始め極地研究所や大学などが協力しています。
そして、なにより凄いのは、このデータは誰でもタダで使えることです。
気象庁のホームページに行くと、欲しいデータをダウンロードすることができます。
気象庁HP
↑ アルゴフロートの展開状況
(気象庁HPより)
トップページの地図の●印をクリックすると、アルゴフロートが観測したデータのグラフが表示されます。
↑ アルゴフロートの観測データ
(気象庁HPより)
このグラフをじっくり見比べると、日にちや時間によって海の温度や塩分濃度が微妙に異なってることが見えてきます。
過去にはこのアルゴフロートのデータを使って、東日本大震災とスマトラ島沖地震で発生した津波の影響を調べたことがあります。
↑ 2つの地震発生時に展開していたアルゴフロート
また、無料で使える海洋観測データはアルゴフロートだけではなく、気象庁や海上保安庁の観測船で観測されたデータも公開されています。
↑ 気象庁HPにある観測データ
これらを上手く使いこなせれば、世界中の海洋変動をリアルタイムで捉えることも可能です!
8月も残すところ10日ほどとなり、小中高生の皆さんは宿題に追われている頃かと思います。
今年は、一味違う自由研究をしてみては如何でしょうか?