南極と超深海の両極地で、実際に自分の手で水中ロボットを潜らせてきた研究者による「実話」をご紹介するブログ。
今回は、「深海調査ロボットを魔改造する!?」というお話です。
以前、このブログでもお伝えした琵琶湖調査用のROVですが、別の研究に使えないか?とのご相談が来ました。
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しかし、このROVは琵琶湖の最深部(水深100m)に潜る仕様のため、今回のミッションには少しスペック不足。
とはいえ、貧乏研究室では、新しいROVを作れる予算もないため、「魔改造してしまおう」ということになりました。
改造と言っても一筋縄ではいかないのが水中ロボット。
今回は、水深200mに潜れる能力を持たせる必要があるため、水圧に耐える能力(耐圧)を高くしなくてはいけませんし、何よりケーブルが長くなることで電力損失
が起こります。
でも、電力損失をカバーするには電源を大きくする必要があり、大きな電源を搭載するには、機体を大型化する必要があります。
そこで、今回は「スキッド」と呼ばれる、下駄のような物を作って、そこに電源を搭載することにしました。
「スキッド」は大型のROVでも活用されている方式で、探査機本体とは別のオプション装備を搭載するスペースとして活用されます。
また、ミッションに応じてスキッドごとを履き替えて使用する場合もあり、探査機の運用効率を高める知恵ともいえます。
↑ 大型ROVのスキッドの一例
スキッドは着底時のショックを受ける役割も果たすので、通常はアルミフレームなどで製作します。
しかし、アルミを加工して錆びない処理(アルマイトなど)をするのはとてもお金が掛かります。
そのため、今回は琵琶湖用ROVのフレームと同じ素材(樹脂)を使って、DIYで作ることにしました。
強度、大きさなどを計算してCADで図面を描いたら部品を発注し、自分で切って穴開けて組み立てます。
↑ 加工中のスキッドのパーツ
今回は水中での比重が約0.98の樹脂と錆に強いステンレスのアングル金具を使用します。
そして箱状に組み上げて完成。
↑ 組み上がったスキッド
試しにROVを載せてみる。
うん。良い感じ
↑ 下駄を履いたROV
ただ、これではまだ強度的に不足してるので、ここから補助部材を取り付けたり、ズレ防止のゴムシートを貼り込んだりと色々作業はあるのですが、ひとまず、パワーアップ魔改造に耐えらる機体フレームになりました。
これに搭載する電源も設計したり組み立てたりが必要で、買ってきて組み立てれば使える物とは違うので、まだまだ作業は続きます。
果たして、深海調査までに間に合うのか?!
(※NHKの某番組のような魔改造ではなく単なる拡張工事ですみません)