一条圭一郎の浮気(?)現場に闖入した翌日の午後、丈二は圭一郎に呼び出された。
仕事の打ち合わせに託けて、昨日の言い訳をしたいらしい。
「どうも。昨日は大変なところを見られちゃいましたね」
開口一番、圭一郎が切り出した。
「すみません。変なとこに居合わせちゃって」
「いやいや、あなたが謝ることじゃない。で、薫には秘密でお願いできますか?」
「もちろん。こんな話、どうやって切り出せばいいんですか。こっちが聞きたい」
笑いながら答える。
「でも、いつまでも続けてていいんですか?誰かに見られたら…」
「クサレ縁でねぇ。なかなか切れないんです。相手も亭主持ちなんですが、割り切ってるみたいで」
それほど困っている風でもない。
「気をつけてくださいよ。僕がバラすことはないですが、社会的地位もあるんだから」
「わかりました。待ち合わせ場所とか考えます」
さらに繰り返し口止めされて事務所の応接室を出る。
今日は勤務中だ。ここへ打ち合わせに来ることは社にも伝えてあるので、
これからしばらくは帰らなくても問題ない。
丈二は迷わず、薫の携帯をコールした。
しばらく呼び出し音が鳴ったあと、薫が出る。
「今日、時間ある?ちょっと寄りたいんだけど」
「いいわよ。今日は診療時間ちょうどに上がれるはずだから」
それから2、3軒、得意先を回り、仕事をこなしているうちに5時になった。
丈二は営業車で薫を迎えに行った。
送迎用駐車場。車で待つ丈二の携帯が鳴る。
「私、薫です。今、圭一郎から電話が入ったの。これから会いたいって。先約があるからって待たせてるんだけど、どうしよう」
「俺はすぐ済むから、そのまま会えばいい。とりあえず車までおいでよ」
薫がやって来た。
「圭一郎さんは不倫中だね。昨日偶然出くわしてさぁ、今日は口止めされたよ」
「ああ、ちょっと派手な年増でしょ。確か藤堂葉子」
「へぇ、そこまで知ってるんだ。じゃあ知らせるまでもなかったな」
「昨日は休みのはずなのに、お誘いがないから、そうじゃないかと思った。ヘタなのよね隠すのが。あれじゃ相手の旦那にもすぐにバレるんじゃないかって、こっちが心配しちゃう」
「まぁ薫さんも相手に文句言える立場じゃないしね」
「それはそれ。でも、かえってその方が気楽といえば気楽ね。こっちがバレた時もそれほど申し訳なさそうにする必要ないし」
薫は他にも圭一郎の女を知っていそうだった。
これは薫よりも圭一郎の方を助けてやりたくなる、そう感じた。
「じゃ、そういうことで、デートに行ってください」
「う~ん、そんな気分じゃないなぁ。丈二、これから時間は?」
「俺はいいけど、そんなに嫌うもんでもないだろ?ちゃんと繋ぎ止めとかなきゃ、金づるは」
「だけど、もう結婚は決まってるんだし、両親とも会ってるし、何しても問題ないわよ」
「そういうもんかねぇ。マリッジブルーって柄でもないだろうし、何が薫さんをそうさせるの?」
「さぁ、何かしら、貴方も充分注意した方がいいわよ」
含み笑いする薫。丈二は一瞬、背筋を悪寒が走るのを覚えた。
「じゃあ、このまま薫さんの部屋に行きますか?それとも別の場所?」
「何か美味しいモノ食べたいな。お勧めは何かない?」
「またロック喫茶ってワケにはいかないだろうねぇ。ステーキは?」
「いいわね、それ、決定!」
後部に納品の荷物を積んだエスティマは夕闇迫る街中を疾走した。
※サイドストーリーは↓です。
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