今朝ほど、妙に印象に残る夢を見た。
どこか詩的で、どこか文学的に感じられる夢だった。
なぜだかは分からないが、それを書き留めておく必要を感じた。
それは以下のような夢だった。
暖炉がある。しかし、部屋は暗かった。
暖炉の火以外明かりはなく、その火もまるで明滅するかのような薄いものだ。
消え入りそうなその火は温かみを感じることはなく、むしろ冷たく儚げだった。
さながらそれは、暖炉の残り火と言うよりは、申し訳程度に灯っている行灯の火のようだ。
わしはソファーに座っている。
背の低いテーブルの三方を囲うようにして置かれたソファの中央のものに偉そうに座っていた。
正面には件の暖炉があり、テーブルの上には何もない。
右手のソファには人はおらず、左手のソファには女が一人座っていた。
濡れたような長い黒髪が印象的で、どこかで会ったことのあるような気がする見知らぬ女だった。
喉の乾きを覚えた。
そう言うと、女はどこからともなく飲み物を出してきた。
ハイボール用と思われる大きめのグラスに注がれた無色無臭のその飲み物に、ある種の『毒』が盛られていることを、わしはなぜか知っていた。
「どうぞ」
女はわしにその飲み物を勧めた。儚げで悲しげで、どこか苦しげな笑顔だった。
わしは何故かは分からないが、この女に殺されてやらねばならないと思った。
そしてまた、何故かは分からないがその『毒』が遅効性で、決して苦しむことなく眠るように逝くことができることも知っていた。
わしはその飲み物を呷った。熱さも冷たさも匂いも味も感じなかった。
わしと女は、同じ床へ入った。
燃え上がる情念を交わしたあと、女は静かに泣いていた。
「泣くことはない。わしはこのまま眠るだけだ。君が悲しむようなことはない」
わしがそう言うと、女は大きな潤みある目でわしを見つめた。
涙に濡れたその黒い瞳は、悲しみとも恨みともつかぬ色をしていた。
女は黙ってうなずいた。
それを見たわしは、釣り込まれるかのように眠りについた。
明け方、既に動くことなく横たわるわしを、わし自身が見下ろしていた。
すでにわしは身罷ったのだ。
女はそんなわしの横で座っていた。ピクリとも動かなかった。
女は泣いてはいなかった。ただ、わしの横に座って動かぬわしをじっと見つめていた。
女がどのような表情をしていたかは、見下ろすわしにはわからない。
ただ黙し、ただ座して女はわしの傍らに佇んでいる。