我が方もご多分に漏れず、西日本豪雨の被害に遇った。
とはいえ、報道に値するほどの大きな被害があるわけでもなかったので、今の所(比較的)平常な生活ができている。
未だ水道の復旧がされていない所もあれば、交通の復旧の目処すら立っていない所があることを考えれば、多少なりとも不便とはいえ差し迫った危険が無いことには大いに感謝すると共に、今回の災害で亡くなった方の冥福とそのご家族、未だ不便な生活を続けている被災者ができるだけ早く元の生活に戻れることを祈るばかりだ。
わし個人については、今回の災害の少しまえにそこそこしんどい病気にかかり、入院するほどではなかったとはいえ20日以上の自宅療養を強いられた。
そして、6月末ごろに職場に復帰したのだが消耗した体力は未だ回復していない状態で今回の大雨である。
先程生活には差し迫った危機があるわけではないと言ったが、こうした状況であったため、地味に体力と精神力を削られたのは確かだ。何せ病み上がりの中年と年金世代の夫婦の家である。やはりそれなりに苦労はあった。
忘れもしない7/6(金)の朝だ。
その日は朝から酷い雨だったが、港から職場までの約2kmをわしはいつもの通り徒歩で通勤していた。
なんでわざわざと思われる方もおられるだろうが、ぶっちゃけ港〜職場間をつなぐ公共交通機関が無いためだ。
いや、無いというのは語弊があるかもしれない。あるにはあるが、最寄りのバス停までそこそこ歩く必要がある。
おまけに、職場近くのバスから結局職場までそれなりに歩く必要があるので、全行程を徒歩で移動するのとかかる時間はさほど違わない。
そんなら歩く方が健康のためでもあるし懐にも優しい。なわけで普通に歩いていたのである。
うちの職場までの道のりは、先の通り2kmほどとたいした距離ではないが、間でそこそこの上り坂がある。そこを登り、坂の中腹あたりに正門につながる下り坂があるのだが、上りでほぼいつもすれ違う女性がいる。
おそらくわしと同じくらいか1つ2つ上くらいの人で、行動理念は小学生、思考は中学生な中年のわしとほぼ同世代ということは、世間的に見ればベック・ボガート&アピスなのだが、とりあえずここではお姉ちゃんと呼ぶことにする。
で、ここですれ違うということはわしは上り、お姉ちゃんは下っているわけだが、その日お姉ちゃんは普段とは違う姿勢で歩いていた。
この雨の中なので傘を持つ方の腕を少し上げているのは分かるが、どういうわけか両方の腕を上げている。
まるで、世間でもそこそこ名の知れた、某老舗デパートや某コンビニエンスストア大手ともコラボ経験のあるSNSゲームの登場人物のようである。
有体に言えば、下のリンクの画像のようなポーズだ。
https://wikiwiki.jp/kancolle/%E9%AC%BC%E6%80%92
このことから、このお姉ちゃんがわしのなかで「おキヌはん」に変わったのは自明のことと言えるだろう。
さて。なんでそんな歩きにくそうなポーズでこの大雨の中を歩いているのかと言えば、なんてことはない。傘を持っている方とは逆の手に別な「荷物」を持っているのだ。
こんな天気の日に何を持っているのだろうと思うのは人の正常な思考だろう。で、すれ違う時に何となく見たのだが、持っていたのはセブンイレブンのコーヒーだった。
わしがおキヌはんを見かけるようになってからこのかた、セブンのコーヒーを持っていたのは今日に至るもこの日だけだった。
しかも、わしの記憶が正しければ、最寄りのセブンイレブンは職場の正門に入る道を通り越してさらに上り、そこから下りきってからもそこそこの距離を移動しなければならない。
何もよりによってこんな日に、距離的に少なくとも1.5kmはある上に結構な上り下りがある道のりをコーヒー片手に歩くことはねぇんぢゃねぇかなと思うのはわしだけだろうか。
その日の午後も盛りといった時間帯のことだった。雨は衰えるどころか勢いを増しているように感じられた。
ふいに隣の事務所から管理のおじさんがやってきた。管理のおじさんと言っても部署のトップクラスの人だからそれなりにエラいおじさんである。
わしが派遣されている会社はおじさんが所属する会社の子会社なのだが、元々はその会社のシステム部門だったのでまるで同じ会社のようにおじさんはやって来るし、他の親会社の社員も同様だった。
ついでながら、派遣のわしと外部発注部門の人たちを除くと、はしの入っている会社の社員は2人しかいない。
そんなわけでおじさんはいつも気軽な感じで喋るのだが、その日はめずらしく焦っているような口調だった。
「○○(うちの部署のトップ)ちゃんはおらんのかいね」
入り口に一番近く、席の場所上扉に向かって顔を向けている格好のわしに話しかけてきた。
「今別室でお客さんと打ち合わせしてるはずですが」
わしがそう言うと
「それどころじゃなぁ」
と返された。
随分な言い方だなと思いつつも、何やら逼迫した状況だということは分かった。
わしの入っている会社は先の通りシステム会社であり、このおじさんの部署のシステムも当然ながらここの持ち分である。
自衛隊とも密接なつながりのある部署で、それだけにシステム運用や保守についても、他の部署とは少々違った難しさのある、ぶっちゃけ面倒くさい大変なところだ。
なもんで、てっきりわしはファイルサーバか何かに深刻なトラブルでも発生したのかとも思ったのが、おじさんの口から飛び出した言葉は、それとは1mmも関係ないことだった。
「警報が出たけぇ、今日は15:30で終了して帰らんといけん」
この2つの出来事が、今回の災害の始まりだったのである。
続くかどうかは気が向いたら(*´ω`*)