結局、話はわしの予想もつかない所にまとまってしまった。
結論から言えば、今は空き家となっているわしの祖父母の家、つまり両親の実家にわしと沙織と恵美子の三人で住むハメになってしまったのだ。
ナゼだっ?ナゼそんなことになってしまったのだっ!?
当初はわしが最初に考えていた通り、わしが占有している2部屋のうち、1つを恵美子に明け渡す方向で話しは進んでいた。
そのように話がまとまるまでにもそれなりに曲折があり、かなり面倒だった。
というのも、わしの両親はやはり娘は親の元にいるべきだと考えていたからだ。
まあ本来であればそうなのだろうが、今回はケースがケースだ。
だいたい、そうは言っても孫娘が自分たちを頼ってくれるのが嬉しいくせに。
そのへんも絡めてわしが両親を説得し、その旨を上手く姉夫婦に説明するという形で話はほとんどまとまっていたのだ。
そこへである。沙織が
「えみちゃんばっかりずる~いっ!」
と言い出した辺りから話が面倒な方向へ進んでしまったのだ。
なんとこの姪は、いい歳をして自分も一緒にここに住みたいとダダをこねはじめたのだ。
が、いかに田舎の一軒家とはいえ部屋の数には限りがある。
恵美子と沙織が相部屋でというのも考えたが、相部屋にするには我が家の部屋はやや手狭である。
子供のころならまだしも、生活スタイルも人生のベクトルも違いが出てきている年齢で、6畳1間で相部屋というのはしんどいだろうと思う。
さらにだ。無意味に多趣味なわしの荷物は、6畳1間では収まらんという事が判明したのだ。
つまり、どうやっても荷物の一部は片方の部屋に残ってしまう事になる。
おまけに、その残った荷物は部屋の実に1/3を占有するとあっては、ただでさえ手狭な部屋をさらに狭くしてしまうのだ。
実質4畳しかない部屋に二人で相部屋とは、いやはや。
男女の違いがあるとはいえ、そのシチュエーションはかの名曲『神田川』のそれを若干上回る。
それに、現代のそれなりの年齢の女性なのだから、調度品の類いもわしの使っているそれよりは数も多い。
それらを入れてしまったら既に、生活空間は1畳以下となってしまうため、それはすでに部屋ではなく物置である。
いや、わしの使い方も基本的には楽器やそのテの機材を部屋中に並べ、空いたスペースに無理やりベッドを置いているのだから、いわば『物置兼寝部屋』だった。
それを考えれば正しい使い方なのかもしれないが、(ギリギリ)妙齢の女性を物置に押し込むのは、シンデレラの登場人物の仕事であって、わしらのすべき事ではない。
だが、そうなると計算上もう1部屋をどうしても空ける必要があり、そのためにはどうしてもわしがこの家を出ていく必要があるのだ。
が、両親の年齢を考えれば、長男のわしがこの地域を出ていくことは難しい。
それでなくても、2年ほど前に脳出血を起こした母親と、5年前から腱やじん帯が骨化する難病にかかっている父親である。
放り捨てて出ていくわけにはいかない。
ではどうするかという話になり、それならということで、件の空き家にわしが引っ越すことになったのだった。
この計画が決まったあと、皆してその空き家を見に行ったのだが、木造平屋のわりには結構部屋数があり、そこそこ広い。
うらぶれた典型的なボロ屋だが、その瀟奢な佇まいはおおいに気に入った。
結構長い間空き家だったので、そこかしこに傷みがあるが、ちょっとしたリフォームを行えば住むのは問題なさそうだ。
知りあいの大工に頼めば安く早くあがるだろう。やれやれ。これで解決だ。
ところがである。なんと引っ越し当日にあの二人が自分たちの荷物を持って満面の笑顔でやってくるではないか。
どうも話を聞くと、わしがおらん所で姉夫婦とも話をつけてあるという。
なんとも周到なことだ。結局のところ、皆して体よくわしに二人を押し付けたのである。
こうして、妙な共同生活がスタートする事になってしまったのだが、この後にも多くの曲折を待っていることを、当時のわしは知るよしもないのであった。
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結論から言えば、今は空き家となっているわしの祖父母の家、つまり両親の実家にわしと沙織と恵美子の三人で住むハメになってしまったのだ。
ナゼだっ?ナゼそんなことになってしまったのだっ!?
当初はわしが最初に考えていた通り、わしが占有している2部屋のうち、1つを恵美子に明け渡す方向で話しは進んでいた。
そのように話がまとまるまでにもそれなりに曲折があり、かなり面倒だった。
というのも、わしの両親はやはり娘は親の元にいるべきだと考えていたからだ。
まあ本来であればそうなのだろうが、今回はケースがケースだ。
だいたい、そうは言っても孫娘が自分たちを頼ってくれるのが嬉しいくせに。
そのへんも絡めてわしが両親を説得し、その旨を上手く姉夫婦に説明するという形で話はほとんどまとまっていたのだ。
そこへである。沙織が
「えみちゃんばっかりずる~いっ!」
と言い出した辺りから話が面倒な方向へ進んでしまったのだ。
なんとこの姪は、いい歳をして自分も一緒にここに住みたいとダダをこねはじめたのだ。
が、いかに田舎の一軒家とはいえ部屋の数には限りがある。
恵美子と沙織が相部屋でというのも考えたが、相部屋にするには我が家の部屋はやや手狭である。
子供のころならまだしも、生活スタイルも人生のベクトルも違いが出てきている年齢で、6畳1間で相部屋というのはしんどいだろうと思う。
さらにだ。無意味に多趣味なわしの荷物は、6畳1間では収まらんという事が判明したのだ。
つまり、どうやっても荷物の一部は片方の部屋に残ってしまう事になる。
おまけに、その残った荷物は部屋の実に1/3を占有するとあっては、ただでさえ手狭な部屋をさらに狭くしてしまうのだ。
実質4畳しかない部屋に二人で相部屋とは、いやはや。
男女の違いがあるとはいえ、そのシチュエーションはかの名曲『神田川』のそれを若干上回る。
それに、現代のそれなりの年齢の女性なのだから、調度品の類いもわしの使っているそれよりは数も多い。
それらを入れてしまったら既に、生活空間は1畳以下となってしまうため、それはすでに部屋ではなく物置である。
いや、わしの使い方も基本的には楽器やそのテの機材を部屋中に並べ、空いたスペースに無理やりベッドを置いているのだから、いわば『物置兼寝部屋』だった。
それを考えれば正しい使い方なのかもしれないが、(ギリギリ)妙齢の女性を物置に押し込むのは、シンデレラの登場人物の仕事であって、わしらのすべき事ではない。
だが、そうなると計算上もう1部屋をどうしても空ける必要があり、そのためにはどうしてもわしがこの家を出ていく必要があるのだ。
が、両親の年齢を考えれば、長男のわしがこの地域を出ていくことは難しい。
それでなくても、2年ほど前に脳出血を起こした母親と、5年前から腱やじん帯が骨化する難病にかかっている父親である。
放り捨てて出ていくわけにはいかない。
ではどうするかという話になり、それならということで、件の空き家にわしが引っ越すことになったのだった。
この計画が決まったあと、皆してその空き家を見に行ったのだが、木造平屋のわりには結構部屋数があり、そこそこ広い。
うらぶれた典型的なボロ屋だが、その瀟奢な佇まいはおおいに気に入った。
結構長い間空き家だったので、そこかしこに傷みがあるが、ちょっとしたリフォームを行えば住むのは問題なさそうだ。
知りあいの大工に頼めば安く早くあがるだろう。やれやれ。これで解決だ。
ところがである。なんと引っ越し当日にあの二人が自分たちの荷物を持って満面の笑顔でやってくるではないか。
どうも話を聞くと、わしがおらん所で姉夫婦とも話をつけてあるという。
なんとも周到なことだ。結局のところ、皆して体よくわしに二人を押し付けたのである。
こうして、妙な共同生活がスタートする事になってしまったのだが、この後にも多くの曲折を待っていることを、当時のわしは知るよしもないのであった。
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