会いにきて。そう言ってねだるのはもうやめよう。
連絡がくるのを待っているのにも疲れたら
きっとそのうち、忘れられるはず。
でも、今夜この淋しさを抱えたまま一人で眠れない。

たとえ私にとってあなたがかけがえのない存在だとしても
あなたにとって私はたくさんあるうちのたったひとつだから。

もうどうしたらいいのかわからないよ。
後には退けないし、前にも進めない。

頭の中を駆け巡る、遠い過去の悲しいことも
つい昨日あった悲しいことも
かつて信じていた幸せも、期待も
何が嘘で何が本当か、わからない。わかりたくない。

あなたの傍で、たくさん笑った私
たくさん泣いた私
怒った私、すねたり甘えたりした私
もう全部ただの夢か何かだと思って

大好きだったんだよ、本当に
そう言って去ってくれれば、いいよ。
春の息づき
雨の混じった強い風がさっと吹いて
熱も涙も消し去ってくれる
喉元と胸を行き来する
この声ももう忘れられたんだ
張り裂けるように泣くんだね、春は
そうして待ち人との記憶を霞ませているのでしょ
薄桃色の靄が晴れた頃には
笑っているのかな、二人、それぞれ別の日常で
そんな悲しい話すら、思い出すことなく
宝石みたいにきらきら輝く赤い果実
刻一刻ととろけていくチョコレート
香ばしい香りのバターもカラメルも
今だけはあたしを置いてきぼりにして
なだれ落ちる髪がどうしようもなく悲しくさせるんだ

色とりどりの光の反射
眩しい水色、紫、赤、みどり
そして透明の見えない涙の通り道に
白い頬を人知れず帰っていく
こんなところでは泣くわけにはいかないから
ウォータープルーフで塗りたくったドールアイ
憂鬱そうなまばたきのたびに零れそうになる
誰にも聞かせられないこの弱音が本音だよ

窓のないここから空は見えない
今、雨が降っているのか、陽射しはあるのか
もう夜はすぐそこまで来ているのか
星空はどこに、真昼の次は東に西に

全て愛おしさの中で眠れない夜に見る記憶のように
粉々に砕けてもなお光り、その存在を主張する

どこまでも透明な瞳の奥
甘くささやく記憶と憂鬱な光
もうすぐ春がやってくるなんて
まるでお伽話みたいに、現実味がないよ
自分のことが嫌いになってしまう、そんな瞬間が多過ぎる… これでもかってくらいに。
それでもこんな毎日、続けるしかないのかぁ…。疲れた。
この冷たい雨のように
言葉が絶えず降ってきて
溢れ出す、氾濫する


孤独、不安、恐怖、焦燥、
淋しさ、愛おしさ、
戸惑い、嘘、
記憶、
夢、幻想、
光、幸せ、
現実は辛いことばかりで、…
目眩、まどろみ、落ちる、落ちる、堕ちる…

手を伸ばす、そこには何もないのに

…?



携帯電話握り締めたって
思い出を温め合ったって
何度も好きだって確かめたって
繋がっちゃいないさ、最初から
当たり前のことだって分かってる
その当たり前が今更こんなにも痛いこと
淋しがりなあたしの頭を笑って撫でる
あなたなんて最初からいなかった

冷たい雨が
もうじき春を連れてくるよ
いずれ別れが来るのも知っているから
今日は相合傘をして出かけよう
何を恋愛と定義付けるものなのか
相変わらず分かりはしないが
それでもいいやと現在に至ります
触りたいものには触ってみるしかないんだ
僕よりずっと大きな君の掌は
思いの外、柔らかくて温かかったから
もう二度と離せない気はしている
気は、しているけどさ…

衝動的、何もかも
愛らしい憎しみ、優しい切なさ、自分勝手な性欲
現実を知らないのは仕方がないとしても
縦横無尽に手を伸ばそうとする
子供が嫌い、僕が誰より子供でいたかったのだから
いつまでも、いつまでも大きくなりたいと背伸びしていたかったのだから

今夜も抱きしめていて
このまま全部忘れてしまおうと囁いた
僕の耳は悪魔みたいに尖んがって
夜の内緒話を聞いていたんだ

今夜も抱きしめていて
そして忘れてしまおう
子供のまま歳をとって
優しさの中で心中しよう、ねぇ
溜まりに溜まった洗濯物と洗い物
散らかり雑然とした部屋、いつもの景色
鏡に見るいつもの自分の顔
だけどいつもより疲れている
手を抜きっぱなしの肌の手入れも

なんかもうやだ、もう疲れた
したいことがいっぱいあるけどそれ以上に今はただひたすらに眠ってしまいたい
もういい加減にやめたいのに、性懲りもなく、ただ意味もなくお腹は減るし煙草の量も増える

二人でどっかに逃げちゃいたいね
携帯の電源もいっそ切ってさ、誰にも邪魔されないように
何も考えないでいいように

だけどそうもいかないんだね
この社会で生きて、その中のルールに従わなきゃいけないから
あたしにはあなただけって言っても
あなたにはあたしだけじゃないのは確かだもの

いつかは離れていかなきゃいけない
こんなやる瀬なさも当たり前のこととしてやり過ごしていかなきゃいけない

どこにも行かないでって泣いた
自分で自分にうんざりした

全てを振り払っていけない
向き合わなきゃいけない
だけど今だけは、あたしとあなただけ
信じ合うことを諦めた
傷付け合うのに疲れた
真実がどこにあるのか
それが一体何になるのか

わからなくなってしまった
冷たい風が吹いて止まない
温めようとしてももう動けない
かつて与えられた愛がため

それなのに内側に宿した熱を捨てられない

今夜もあなたの傍に寄り添う
無駄だとわかっていても抱きしめる

あの愛の正体を探るように
それだけが今掴める真実

ここにいる二人
あと何度朝を迎えれば近づけるのでしょう
この雨があがれば
そこに吹く風は
今のあたしには些か手痛いのかな
この寒さを今少し
耐え凌げれば
もうじきに春は来るのでしょう

本当に一番好きな人とは長く一緒にいることはできないと
昔見た映画でそんな台詞があった
信じる強さも疑う勇気もない私は
ただここで温かな香りの星を仰いでいる

冷たい眼差しで見つめる蒼い惑星
手の届かないほど遠くで輝くから
ずっとここで眺めていたいのかな

季節が巡れば星は南へ、南へと傾く
私の黒い目はあなたの光で溢れている

その温もりを一番近くで感じているから
今日もベッドの中で優しい口づけ

この物語の終結は
春が来るまで待っているつもり