はくねつでんきゅう -13ページ目

<< 前のページへ最新 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 最初次のページへ >>

本日のランチは沖縄料理だったんだよね

僕はちょうど会計をするレジを背にしたカウンターに着席したんだ

オーダーは沖縄ガパオランチ￥980

ゴーヤが入っててなかなか美味かったのね

レジの前に座ってたから食事中、他のお客が自分の後ろで会計をしていくわけ

すると毎回店員のお姉さんが「どうぞお土産にちんすこうをお一人ずつお持ち帰り下さい」と言ってお客にちんすこうを渡してるの

それを僕はガパオを口に頬張りながら何度も聞いていたわけ

「お土産にちんすこうをお持ち帰り下さい」

「お土産に、ちんすこうをお持ち帰り下さい」

そして僕も食事を済ませ、ナプキンで口を拭いた

さぁ、いよいよ僕が会計をする番

伝票をお姉さんに渡し、ちんすこうの在処を捜す

ここで気づかれてはいけない

あくまでも「えっ、お土産にちんすこうもらっていいんですか!?」というスタンスでいかねばならないからである

下心を出してはいけない

目標物はすぐそこなのだから

ちんすこうは案外呆気なく見つかった

レジ台に大きな箱があったからである

箱の上部は丸い穴が空いており、ちょうどくじ引きの箱と同じスタイルであった

しかしその小さな穴の向こうに確かに見えていたのだ

個別包装されたちんすこう氏が

もはや射程圏内

手を伸ばせばそこにちんすこう氏が鎮座しておられる

ただここで焦らないのが大人のたしなみである

奥ゆかしさすら感じさせる立ち振舞いで私はガパオランチの金額を支払った

まだお姉さんから例の言葉はない

私が背中で何度も聞いた「ちんすこうをお土産に」のあの言葉である

決して自ずからは言い出してはならない

私は耐えた

すべては箱の中のちんすこうのために

All for ちんすこう、ちんすこう for me.

お姉さんはレシートが印字されるのを待っている

僕もその作業をじっと見つめる

一瞬の静けさ、緊張状態

体感時間は長かった

このタイミングで言ってくれてもいいものだが、

何故なら私は今受け入れ体制を強固にしている

しかしお姉さんは口をつぐんだままだ

そうか、わかったぞ。

彼女はすべての会計業務を終えたあとにちんすこうの話を切り出すに違いない

その方がお土産というサービスの印象がよくなると考えているのだろう

仕方ない、レジの動作を待つ他ない

ようやくレシートが印刷され、お姉さんはレシートを切り取った

「こちらレシートになります、ご来店ありがとうございました！」

「…」

「またのお越しをお待ちしております、ありがとうございました！」

ちんすこうプレゼントは1,000円以上食事をした者だけのサービスだった

お姉さん、夢をありがとよ！

Android携帯からの投稿