「母のカルピス」 | 日々是非可換   -非可換な私の雑記ー

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今日あったこと、昔の出来事、未来への思い、考えたこと、考えなかったこと、手慰み、記録、思いつき、思い出。非可換な私が送る非可換な日々を書き記します。公開しているけれど公開が目的ではありません。後悔はします、多分。



私が小さい頃、夏になると母がカルピスをコップに作ってくれていた。氷は入れずに、冷たく冷やした水で割ったそれは飲みやすく美味しかったのだが、子供心にはもっと濃くつくればいいのにと思っていた


祖母から小さな商店を継いだ母は毎日忙しかったので、夏休みになると徒歩10分かからないくらいのところにある祖母のところへ毎日のように行っていた。広い庭がある古い日本家屋は薄暗い部屋もあったが風通しがよく、涼しい部屋で宿題をしたりして過ごした


祖母宅にもカルピスがあった。長く商店をやっていたためお中元としてたくさん届いていたのだろう。祖母もよくカルピスを出してくれたが、あるとき思い切って自分で作りたいと言ってみた


祖母は笑って「やってみるかい?」といい、私にやらせてくれた。井戸から汲みたての冷たい水とカルピスを用意して、祖母と私の二人分をコップにつくった


思い切って濃くしたそれをごくごくと一気に飲んで「美味しいっ!」と叫ぶ私に祖母は笑った。それから二人分のカルピスを入れるのは私の仕事になった


最初のうちは甘くて酸っぱい、濃いカルピスを美味しいと思ったけれど、飲みやすさなども気になってだんだん薄くつくるようになっていった。祖母も「おまえのつくるカルピスは美味しいねぇ」と言ってくれるようになった


いつの間にか飲まなくなったカルピスを先日お中元としていただいた。進学で都会に出てから飲んでないと思う。湯冷ましを冷蔵庫に入れて冷やし、コップとビン入りのカルピスを用意した


コップにカルピスを入れて冷水を注ぎ、よく混ぜて口にした。あっ母の味だ、と思った。実家の台所と外でうるさく鳴くセミの声も一緒に思い出した。ニコニコしながらカルピスを作ってくれる母の顔。子供のころに親しんだ夏の味。


この夏が終わる頃には私も母になる。昔私の母が作ってくれたように、暑い夏に私も子供にカルピスを作ってあげたいと思う