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小学校5年生の時、映画「零戦燃ゆ」が公開された。






私は父の戦争映画好きの影響ですっかり戦争小学生になっていた。







テレビのCMが流れると父にねだったものだが、どう言うわけか母と叔母が連れて行ってくれた。







やはり映画館で観るとスッカリ感化されるもので、その頃は零戦一色の日々を送っていた。








ある日父が釣具屋で一つの帽子を買ってきてくれた。








旧海軍艦内帽である。(漁船の船長さんがよくかぶっているらしい)








「零戦燃ゆ」で主人公のパイロットの親友役の整備兵の人がかぶっていたのと同じである。







嬉しかった。








翌日から旧海軍艦内帽をかぶって登校した。








当時の私は何よりも格好いいと思っていた。








ある日、校門の前で我が校一の名物先生が立っていた。








その先生は戦争へ行っていた年では無いと思うが、少年期に戦争を体験していた世代だと思う。











私が近付くと敬礼をしてくれた。









私も敬礼した。








今思うとかなり変わった小学生だと思う。








私が父親ならかぶらせはしないだろうと思う。








また、主題歌も良かった。








石原裕次郎の「黎明」









劇中で聴いたが、それ以外聴くチャンスはない。








当時はネットも無い時代。








ある日、父の会社のバス旅行があり、車中で恒例のカラオケ大会が始まった。







バスに有るカラオケテープのリストを見ると「黎明」が有るではないか!







私は「黎明」をリクエストした。








歌詞カードを見ながら、テープがスタートした。








歌えない。







何と無くサビはわかるが、Aメロなんて聴いたことが無いような感じだった。







とにかく、劇中で一度だけ聴いただけだから、歌えるはずがない。









歌が終わったら父の同僚のおじさんに「君は歌が下手だね」と言われた。当然の事だ。








その後、現在となってYouTubeで「黎明」を聴いた。









劇中の映像が蘇り少年当時の感情や空気感を思い出すような感動があった。









一瞬、恐れのない穏やかな日常へタイムスリップしたようだった。