<再掲載 ※3年ほど前に掲載させていただきました>
『新月の夜、南の海で彼らは生まれた。幼い彼らは北赤道海流の
西端から黒潮に乗り継ぎ、数ヶ月をかけて日本や東アジアの国々
にたどり着く』―。
そんなプロローグに、ピンときた人はいるのではないだろうか。
文芸社から発行されている『新月の夜、南の海で』(357頁・B
6判・1680円[税込])は、ある水産会社社長の謎の死から始
まり、鰻を絡めながら描かれるミステリー。
物語の随所には
“蒲蒸し鰻のリパック。聞いた事があるだろう”
“本名は『K○特うなぎ』言うてな、日本初のブランド鰻や”
“愛知県一色町には百軒を越える養鰻業者がおりまして、もう1
7年も連続で鰻生産日本一ですわ”
など業界人なら思わず、にやりとさせられる会話シーンが多くち
りばめられている。
ちなみに、著者の鹿野苑俊(ろくやおんすぐる)氏は無類の鰻好
きとか。“鰻”が大きく関わる本書はとくに業界関係者は是非、一
読してみてはどうだろうか。
鰻だけに、“つかみどころのない”展開が終盤まで続くが、読み終え
た後には業界が忘れかけている“何か”をきっと呼び覚ましてくれる
事だろう。
▼読み終わった後、何かすがすがしい気持ちにさせられた事を覚えている。。。