弁論主義関係

1.第1テーゼA

⑴要件事実関係

基本的には、第1テーゼの問題=要件事実の問題と考えて良い。そのくらい両者の関係は深い。問題としての面白さを要件事実に置くパターンと第1テーゼに置くパターンとが想定できる。前者の例としては民法94Ⅱの「善意の第三者」や準消費貸借の要件事実を問う問題が挙げられるが、昨年のように現場思考型の要件事実問題が出題されることも考えられる。後者の例としては重要な間接事実にまで第1テーゼの対象を拡大しないとおかしな結論になってしまう問題が考えられる。代理人による契約締結が問題となった例の判例はこのような見地から再評価の余地があり(百選の解説を参照)、当該判例が再登板する可能性も否定できない。

⑵要件事実関係以外

要件事実以外の切り口から出るとすれば、王者的規範の問題(公序良俗違反の主張等の許容性)や過失相殺の問題は出題可能性が高いと思われる。過失相殺の問題では、第1テーゼの問題と権利抗弁の問題を区別して論じる必要がある点に注意。

 

2.第2テーゼA

⑴再登板

自白はほとんどの論点が既に本試験で出題されている。(一部の超重要判例等を除き)再登板を極端に嫌う司法試験民訴でも、自白は再登板を検討せざるを得ないと思われる(そうでないと、自白の問題を今後出題できなくなってしまう。)。H19,21,23,R1で出題された内容を確認しておけば良いのだが、論点ごとに重要なポイントを念のため記載しておく。H19~23は自白レジュメの過去問解説コーナーを参照(面倒なので以下そのままコピペする。「解説」をしているので論点だけを確認したい人には過剰な内容。適宜読み飛ばしていただきたい。)。

(1) 平成19年(補助事実の自白)

 文書の成立の真正を争う旨の陳述の訴訟法上の効果を問う問題。認否をしなかった場合(擬制自白の成否が問題)との比較も要求されている。

 文書の真正成立は補助事実。補助事実の(擬制)自白があれば証拠調べを省略できるかが問われている。補助事実の自白一般ではなく、とりわけ争いのある処分証書の成立の真正が問われているところに出題者の意図を感じなくてはならない。党派的な議論ではなくニュートラルなあなたの見解が問われている。

 まず定義。観念の通知説だと、補助事実まで自由心証を制約しなくてもいいじゃないって発想につながる。それを前提にひっくり返す立論をしてもいいが、意思説を前提に説明する(僕が観念の通知説についてあまり詳しくないためです。すいません)。証明責任説で書くのが本問では素直。補助事実でも文書の真正成立には証明責任があるから「工夫」は必要ない。

 意思説を前提にすると「事実」をどこまで広げるかは、争点処分意思をどこまで尊重するか(補助事実の処分でも尊重に値する重みがあるか)という問題になる。この重みは訴訟の結果との関連性が密接かどうかで判定する。結論を左右するような補助事実(重要な補助事実という言葉を使うかはともかく)についての処分意思は尊重に値するであろう。処分証書の真正成立が認められれば、書面によってなされた法律行為の存在まで認定される。結論に直結する補助事実だといえる。したがって審判排除効、不可撤回効まで認めてよいだろう。

 これに対して補助事実の擬制自白を成立させてよいか。裁判所が判決の基礎にしたいと考えれば証拠調べを省略してよいというところまでは異論なく認められる。問題はそこから先。審判排除効、不可撤回効まで肯定するか。高橋説では認めない。裁判官の便宜のための制度というのを強調する。それでよいだろう。

 

(2) 平成21年(擬制自白)

 この問題でひねっている要素は「建物買取請求権をYが訴訟外で行使した事実」をXが訴訟で主張していること。権利抗弁ではないことを正しく説明した上で要件事実的に正しく整理(Yが立証責任を負う)するのが最初のハードル。このひねりを擬制自白のところでどう使えばいいかが次のハードル。他は処理するだけ。

 まず自白の定義を書く。意思説+証明責任説の定義がよいだろう。他の定義でも頑張れば書けるのかもしれないが、確認してないので…。続けて先行自白の定義を書く。擬制自白の定義も最初に書いてしまうか、③の冒頭に回すかは趣味の問題。

 次に建物買取請求権の訴訟外行使の事実を要件事実的に整理して、当該事実はXに不利(=自白が成立するのはX)だと確認する。これが③との関係で言質になる。これを言わせるために①②のようなつまらない問題が出ている。なので、ここは明確に書くべき。

 ①②③の3通りに場合分けして論じることが要求されているが、①②は(先行)自白が成立する・しないと書くだけ。争わない意思の確認を挟む説を前提にしても、この事案であればXは自白成立で問題ないだろうから大きな影響はない。普通の自白ではなく先行自白にしたのは作問の都合。「先行」であることに面白さがあるわけではない。

③は立証責任を負う当事者Yが争うことを明らかにしないという場合。「当事者」「相手方が主張した事実」(159Ⅰ)に該当するかという形式で論じる。擬制自白は争うことを明らかにしなかった者にしか成立しない。本件で言えばY。通常の自白であれば成立させる余地はないが、擬制自白の特殊性を強調して擬制自白を成立させることができるか検討する。自白の根拠を不利益事実を処分する当事者の意思に求めるのだとすれば、Yは「不利益事実を処分する当事者」にはあたらない。擬制自白は争うことを明らかにしないという事実から黙示的な意思(表示)を擬制するものに過ぎず、その限りで特殊性があるだけと考えると擬制自白を成立させない処理もありうる。これに対して高橋説はこのような場合でも擬制自白を裁判所が裁量で成立させることを認める。畑説は擬制自白を成立させなくてはならないとまで言う。問われていること(証拠調べをすることなく判決の基礎とすることができるか)との関係では意味ある違いではないので、こだわる必要はない。裁判所の立場でニュートラルな検討が求められているので結論はどっちでもいいのだと思うが、学説的には擬制自白認めるのがノーマルな感じがする。

 

(3) 平成23年(権利自白)

 超難問。しかも必要な論述量が多い(3ページは越えてしまう)のに配点割合はしぶい。元ネタは重点講義と松本民事自白法(自白に関してはこれ以上の本はないと思う。ドイツ臭い議論が多いが…)。

 権利自白の定義を述べる中で入れ子構造的に自白の定義を述べる。権利自白に不可撤回効を認めるには、ここで意思説をとっておく必要がある。

 次に自白の拘束力の根拠を述べる。これは誘導文で言及が要求されている必要的記載事項。当事者自治が裁判所拘束力の根拠、当事者拘束力の根拠は自白の効用を発揮させるための政策判断であることを説明する。

 次に所有権の来歴を立証するのが困難であるという話を一応する。これは趣旨実感を見ると論述が要求されているので一応書くが、答案の流れ的には必須の要素ではない。もし僕が初見でこの問題を解くことになれば、不要な要素として書かないはずです。この困難性は通説の処理(裁判所拘束力を否定)でも対処できるので、不可撤回効を肯定する論拠にならないことを説明する。

 ここからが自説を述べるところ。高橋説を使って、法の解釈適用は現行法下でも裁判所の専権ではないことを説明する。「請求認諾→先決関係既判力」と権利自白は実質的にはほぼ変わらないことを説明する。

 最後に撤回に関する論点に触れておく。意思説を前提にするのだから、撤回の本来的要件は錯誤のみ(無重過失で調整するのは別論)。反真実立証は錯誤を立証するためのツールにすぎない。問題は権利自白での反真実をどのように理解するか。先述した高橋説で処理すべきだろう。錯誤の疎明と当該法律効果と相容れない1つの事実の立証を要件にする。

 

R1は要件事実がメイン論点だが、その後の処理で争わない意思の再確認を持ち出す(その前提として自白の定義は意思説に立つ)ことが求められていた。なお、自白レジュメP11「10 関連する問題(出そう!)」に記載の問題は、一定のアレンジを加えた上でR1で出題済みと考えられるが、事実関係をいじった上でR1とは逆の結論を導く(高橋説を前提にすることになる)ことを求める問題として再登板する可能性も否定はできない。

 

⑵Not再登板(=本試験では初出)

補助参加、独立当事者参加、訴訟承継との関係で自白の撤回の可否を問う問題は出題可能性が高いと思われる。軽めな問題となるが、出題者からすれば、その方が使い勝手が良いと思われる。

 

3.第3テーゼ→出ない!

ただし、152Ⅱは再登板の可能性を否定できない。念のため条文を確認しておけば足りる。