予告の時点で魅力に乏しい内容に感じていました。
ファンタジー要素もありながら、提起されている問題が凄く日常的なもので、話の広がりが見えてこないのです。
相手の心が読めるという能力は数多くの物語で描かれ、そこで問題になるのは醜い心に対してです。
それで関係が悪化するのが常ですが、この三人は醜い部分が見えないからこそ友達になれたという話になっています。
私はこの基本設定からして、かなり無理があると思いました。
物語の山場とするために能力の全容が終盤まで明かされなかったのですが、正直オチにするには弱い要素だと思いました。
このオチも含め、全体的に薄味で盛り上がれなかったのです。
それこそ、この設定は最初から提示し、その上で自らの選択で能力を捨てるくらいにしても良かったようにも思います。

この心が通じるという設定を除くと、本筋は特に惹かれることもない青春ストーリーです。
恋の行方も特に盛り上がる部分はなく、少なくとも私はこの中に惚れたというキャラは居なかったです。
それは男性でも女性でも変わりはありません。
失恋するなら、もっと思い入れをふかめてからにして欲しかったのです。
その辺りが凄く薄味で纏まってしまったと思います。
それにメインキャラ全員が、結局良い人ばかりだったのも寧ろ心に大きな問題を抱えたキャラが居た方が良かったようにも思います。
確かに彼らは作中で成長しますが、その過程も結論も余りに順当なもので、殆ど心に響かなかったのです。

岡田麿里さんの脚本は近年どうにも低調のように思えます。
結構、期待して観に行くのですが、本作も私にとっては今一歩でした。
しかし、それでも彼女の脚本は定期的に映画化されているので、しっかりと需要があるのでしょう。
私自身、なんだかんだ言いながら映画館に足を運んでいます。
それくらい気になる脚本家であるのは確かです。
それに、作品と言うのは観た瞬間の評価が全てではありません。
後になって気付いたり、教えて貰ったりで評価が変わるものも沢山あります。
本作もそういう要素のある映画だとは思うのです。