この作品の劇場映画もこれで三作品目ですが、実に珍しい形式の映画だと思います。
テレビシリーズの各クライマックスのみと、次のエピソードの冒頭という組み合わせで成立するというのは他の作品では考えられません。
しかし、この鬼滅の刃だからこそ成立する形式になっています。
それは、オンエア版自体が映画クオリティで作られているからこそ出来ることです。
これも作品自体の人気の高さ故のことかと思います。
そして、今尚勢いがあると感じたのは入場者特典です。
今回、ほぼパンフレットと同じレベルの冊子が配られました。
これだけのものを作れるのはこの作品の強さの証明でもあるのでしょう。
何故、このシリーズがこれだけヒットしたのかは様々な理由があり、ここでは書ききれませんが、一つ言えることはこの作品が今の時代にぴったりと符合したからこその結果なのでしょう。
この作品はそういった意味でも意義のあるもののように思います。
それは他の作品では無い要素なので、色々と興味深いシリーズだと思っています。

やはり刀鍛冶編のラストはかなり盛り上がりますが、一番の見所は禰豆子の太陽克服シーンでしょう。
本作では正に炭次郎はトロッコ問題に直面します。
結果、彼は決断出来なかった訳ですが、決断は禰豆子によってなされます。
このシーンが本作のクライマックスであったのは間違いないでしょう。
とてもわかりやすいだけに感情移入しやすく、心が動かされます。
振り返ってみても、この鬼滅の刃というのは、極めて直球勝負の内容になっていると感じます。
昨今のバトルものというのは、かなり複雑な設定の上で戦ったり、そこでのどんでん返しなどを用意したりします。
そういった仕掛を用意するというよりは、かなり王道の肉弾戦で挑みます。
それが真っ向勝負だからこそ、観客の心を動かすのかもしれません。
今回は更に、犠牲の上での勝利という展開からの奇跡ということで、理屈を超えた感動があります。
逆に何故、禰豆子が太陽を克服出来たのか明確な理由は明かされていません。
それでも、そこは大きな問題ではなく、より心が動くことが大事なのでしょう。
そういう意味で、今回のクライマックスの盛り上がりは素晴らしかったと思います。

逆に柱稽古編は本当に予告編の内容だったと思います。
そういう意味では一本の映画を観終わったのと違う後味が残ります。
その点もこのシリーズならではですね。
柱稽古編は伏線も山のように用意されていましたが、かなり不穏な感じになっています。
恐らく、終盤に向けてかなりの犠牲が出ることになるのでしょう。
そういった部分もこの作品から目を離せない要因になっているように思うのです。

また、この感じなら原作の最後までアニメ化されるでしょう。
しかし、映画も同じ形式で作られるかはわかりませんね。
それも全ては興行成績次第といったところでしょう。