藤本タツキによる読み切り漫画を映画化。

 

学級新聞の4コマ漫画を描いていた小学生の藤野。誰よりも絵が上手いと自負していたところ、不登校の京本が載せた4コマ漫画の画力に衝撃を受ける。そこから何かに取りつかれたように絵の勉強を始める藤野だったが、やがて……。

 

発表当時に原作は読了。京アニの事件を連想させる云々で批判されていたが、それ抜きにしても私はそこまでの感銘は受けなかった。上手だなーくらいの記憶。

 

今回のアニメは、とても良くできている。それは間違いない。創作へ向かう情熱、自分とは別の圧倒的な才能に出会ったときの焦燥感、深く理解し合える仲間に出会ったときの高揚とエネルギーなど、クリエイティブな分野に限らずなにかを成し遂げたいと思っている人にとっては深く刺さるはずだ。

 

また、そういった感情の動きのひとつひとつをアニメーションで表現していて(雨の中を疾走するシーンとか)、表現技術としてのレベルの高さも堪能することができる。極めて優れたアニメーション映画であることに疑いの余地はない。

 

しかし、言いにくいのだが私はこの作品がそこまで大好きにはなれない。それは京アニ事件を連想させるからとか、統合失調症の描き方がとかいったことにはあまり関係がなくて、私は元々「大きな感動を生み出すために死を利用する」タイプのストーリーが苦手なのだ。

 

とはいえ、多くの映画で人は死ぬわけで……もちろんそのすべてが苦手ということでもない。どういうストーリーが「死を利用している」と感じるのかについてはしっかりと説明できなくてもどかしいが、とにかく私は本作については「死」が感動を生み出すための装置として機能しているという印象を受けてしまったんだよね。あと、ワンハリのオマージュといわれている部分については、オマージュであることは否定しないが根本的に全然帰結が違うのでねえ。本作についてはそこにグッとくることはできなかった(ワンハリはグッときた)。私だって創作の力を信じているけれど、うーん。原作を読んだ時の印象があまりないのも、このあたりへの違和感だったんだと思う。

 

ほぼ絶賛しか見かけないのでちょっと勇気が必要だったが、以上が私の正直な感想。