小路紘史監督による自主制作映画第2弾。

 

裏稼業の男・辰巳は死体の解体などを押し付けられる日々。組織の薬を内部の人間がパクったことから組織内に亀裂が走り、犯人とその妻が殺される。妻の元恋人だった辰巳は目撃者となった妻の妹・葵を連れて逃亡する羽目に陥るが……。

 

低予算ながらとても良くできたジャパニーズノワール。最高!!

 

主人公と死んだ弟、殺された元恋人とその妹、妹が復讐を誓う敵とその兄という3組の兄弟が呼応し合うというしっかりとした構成を軸に、規模は小さいながらも仁義と愛憎が渦巻く数日間の抗争がバシッと決まっている。ロケーションも抜群で、国内でよくこんな場所見つけたな!というほどに「映える」背景に大興奮だった。

 

殺人の快楽と性愛の快楽を重ねつつ、その関係を辰巳と葵に安直に適用しないのもニクい。あくまでも葵を「こども」として扱いつつ、「お姉ちゃんのものは獲ってしまう」という過去を語らせることでプラトニックな情(性愛ではない)を滲ませルに留めている。では、性愛部分はどこで発揮されるかというと組織のトップと敵という意外なペアに担わせていて、あまりこういう技巧は邦画では見たことがなかったので感心した。映画を構成する要素のひとつひとつに奥行きを持たせているというか。なんだかとても文学的なのだ。

 

死体解体描写も含め、暴力描写・残酷描写もギリギリを攻めている。予算の関係もあるのか派手なドンパチやアクションシーンはないが、敢えて衝突シーンを抑えているところが渋くて良い。『新しき世界』のような韓国ノワールとハリウッドノワールの良さを足して、日本的・昭和的な空気感に落とし込んだような独特の世界観がスクリーンに満ちていて最高だった。

 

無関心と諦念の底に隠れた情や熱さを重層的に演じた遠藤雄弥。良い顔になったよねー!!D-BOYSだったんだよ?ミュージカルテニスの王子様で主演してたんだよ?そんなツルっとした過去の印象を全く感じさせない「語る顔」!昔から演技が上手ではあったけど、生半可な意識ではあんな雰囲気にはならないだろうから、ちゃんと自分の進むべき・進みたい道を考えながらキャリアを積んでいる人なんだろうなあ。とても良いよ!!!

 

葵役の森田想も見事なクソガキっぷり。24歳にしてあの感じを理解して表現できるもんなんだなあ。俳優さんってすごいですね。あとは、舞台演出家の倉本朋幸が演じる龍二ね。明らかにヤバいっていう空気を身に纏っていつつ、どこか性的な匂いがするという唯一無二の存在感。素晴らしいとしか言いようがなかった。他のキャストも総じて良かったし、今年の邦画の中では最も万ぞ悪が高い1本でした!!