衝撃的な中止騒動があったのは皆さまご存じの通り。

 

 

まさか交通費や宿泊費まで補償することを明言するとは……このことを「当然だ」「むしろ、いままで客をなめすぎていたんだ」と評価する声が多いが、私はこの補償内容を見てかなり愕然としてしまった。これ、前例になるよ?大丈夫?

 

もちろん、払い戻しは当然だしその際にかかった手数料を負担するのも道理だとは思う。演出・進行上の問題だったようだが、いずれにしても主催(プロデュース)のコントロールミスであることは確かなので、主催側が責任を負うことは当たり前だ。しかし!しかしだよ!?

 

どんな理由であれ公演中止になったらそれは「客の責任」では絶対にないし、主催の責任であることに変わりないわけじゃない?出演者やスタッフの体調不良ならば理解を得られるの?舞台機構に故障があったという理由だったら?施設内の場所でボヤが出たとか、テロ予告があって避難指示が出た、だったら?「これはチケットと手数料の払い戻しだけOK。仕方ないからね」「これは交通・宿泊費も補償してもらわないとね」という線引きはどこなの??

 

私の感覚では、地震などの完全な不可抗力ではない場合は、すべて「主催の責任」だと思っていた。なので、出演者の不調だろうが機構の問題だろうが、謝罪するのは主催であり、対応するのも主催。東日本大震災後やコロナ禍などで公演を中止した場合だって、「中止」という判断を下したのは主催だからやっぱり謝罪するのは主催で、責任を取るのも主催。そういうイメージ。だから、正直言って「理由」の線引きがどうなるのか全く見当がつかない。

 

主催側の問題で中止になったのに払い戻しをしないとか、払い戻し手数料を取るとか、そういうのは明確に違うと思う。でも、今回のような前例ができてしまったのはかなり衝撃だった。


今回はプレビュー公演はなかったが、ゲネに間に合わなかったとか、台本が初日に間に合わなかったとか、そういう話はたまーにあるし、それこそ「スパイダーマンミュージカル」みたいに何度も延期になって幕が開かないという舞台も海外ではあった。ブロードウェイのチケットを持っていて、公演が主催の都合で中止になったときに「航空券と宿泊費を補償してもらおう」ってなるかな。というか、補償したことってあるのかな。


今回、プレビュー公演が中止になったんだったら、ここまで燃えなかったんだろうか。初日に間に合わせるのは当然だけど、新作の場合は予測不能な事態が生じやすかったり、妥協点が見つけられなかったりして時間がかかってしまうことはある。準備期間を十分にとっていないからいけない!という意見もあろうが、「十分」ってどれくらい??どんなに準備期間を設けていたって、稽古の最後の方で大揉めする可能性だってあるのに?


商業ミュージカルについては過去にこんな記事を書いた。

 

https://ameblo.jp/umisodachi/entry-12118837531.html

 

https://ameblo.jp/umisodachi/entry-12094119339.html

 

ジョジョについてはわからないが、そもそも赤字前提か、ギリギリの予算組をしていた可能性も高いかなあと思う。少なくとも、数回飛んだ時点で赤字は確定だろう。


「初日には絶対に間に合わせるべきだ」という意見に異議はまったくない。でも、世の中に絶対はない。今回のことで、「公演中止」になったときの事態に恐怖を感じた主催は少なくないだろう。特に資金力がない団体にとってはなおさらだ。「絶対に初日には間に合わせないと」と思っても、世の中に100%確実なことなどないのだから。これによってチケット代がさらに上がる傾向は避けられないのではないか。


今回のことで、「怖いから初日付近のチケットはやめとこ」という買い渋りが今後どの作品でも発生するのは自然だし、仕方がない。東宝はその前例を使ってしまったという罪はある。最初の説明も下手すぎた。ただなあ……私は今は完全に観客の立場だからいいんだけど、冷静さを欠いた炎上でバタバタと事態が動いていったのを眺めながら、ちょっと心配になってしまった。