ダルデンヌ兄弟の最新作。

 

ベルギーで暮らすティーンエイジャーのロキタとまだ幼いトリ。ふたりはアフリカからやってくる道中で出会った他人だったが、疑似姉弟として一緒に暮らしていた。しかし、トリにはビザが下りたもののロキタはなかなか認められない。本物の姉弟だと証明することができないからだ。ロキタは、祖国に残した家族への仕送りと移民ブローカーへの支払いのために違法な仕事に手を染めざるをえず……。

 

演技経験のない子どもたちを使い、ドキュメンタリーのようなタッチで紡がれるあまりにも厳しい現実。ロキタとトリが置かれている状況が少しずつ明らかになるに連れ、信じられないほどの過酷さに打ちのめされそうになる。

 

「子どもだけでも救いたい」とベルギーにやってきたわけではなく、家族を養わせるために国から出されたんだなとか。子どもたちを保護するはずの立場の人々にも、「本当の姉弟かどうか」が証明できなければ排除されるんだなとか(そのための面接がとても可哀そう)。移民ブローカーや裏家業の人間たちには金銭的に搾取されるだけじゃなくて性的にも搾取されているんだなとか。目が覚めてから夜眠るまで、ロキタが安心できるのはトリと過ごす時間しかない。それ以外の時間は、ひたすらに搾取され苦しめられている。

 

それだけに、トリとロキタの絆は強く、かけがえがないものだということがわかる。お互いがいるからこそ生きられ、お互いがいるからこそ笑うことができるのだ。だから、引き離されてしまったらもう……過酷すぎる現実の中で、ふたりの絆が鮮やかすぎるほど鮮やかに描かれていく。

 

ダルデンヌ兄弟の映画は、フィクションらしさを極限まで薄めている。それは、「これは現実に起きていることだ」という強い主張があるからだ。世界中に無数のトリとロキタがいて、彼らは今も搾取され、傷つけられ、無視されている。彼らを搾取し傷つけている人間だけではない。ジャッジする人間も、無視する人間も、傍観する人間も、この映画は等しく糾弾している。だから、私たちはこの作品を観て傷つかなければいけない。私たちはトリとロキタ側ではなく、明らかに彼らを見捨てている大人側なのだから。