いつもながら冴えない毎日を送るのび太は、ユートピアの話を聞いてワクワクする。そんなある日、空の上にユートピアらしきものを見かけたのび太は、ドラえもんに頼んでみんなで探しに出かけるのだが……。

 

最近のドラえもん映画にはゲンナリさせられてきたが(感動の押し売り、説教くさい、ファンに媚びた不自然な要素など)、今回は良かった!好き!シンプルなストーリーラインと、語りすぎない感動展開、あっさりとした幕切れが好みだった。あと、偶然なのか社会的にもタイミングピッタリの題材になっていたのも良かった。

 

【以下ネタバレあり】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユートピアといいつつ、ディストピアなんだろうなというのは大人ならばかなり最初の方で気づくはず。ヤマギシ会的なコミュニティ(っていうか想定しているのはヤマギシズムそのものなのかも)は画一的で、共同生活、決められた答えと行動、すべての価値観に「正解」がある感じ……と、めちゃくちゃ不穏。「ここで暮らせば誰でもパーフェクトになれる」という謳い文句は子供の好奇心を引き出し、大人の不安を掻き立てる。

 

のび太以外はすぐに「パーフェクト」になっていき、段々と様子がおかしくなるのだが、その変化を言葉で説明していないのがい。のび太がうっすら感じている違和感を表情や態度で示すだけで、「みんなどうかしちゃったの?」なんていう言葉を最初に持ち出さない。観ている子どもたちも、きっと同じように少しずつ違和感を感じていくはずだ。

 

カルトを題材にし、最終的には「みんなちがって、みんないい」というシンプルなメッセージに繋げていくわけだが、メッセージ自体はハッキリと言葉にして響かせる。でも、ユートピアで出会った仲間との別れはかなりあっさりと終わらせる。「どこかで幸せに生きている」ということだけを示唆してスパっと切るのが心地よかった。

 

伏線回収もある程度はうまくいっていて、なるほどと思わせた。ただ、回収するための伏線もいくつかあったのと、光を当てると虫になるライトというキーアイテムが唐突に登場したのはイマイチ。飛空艇でワチャワチャしていた段階で登場させておくべきだったと思う。

 

あと、黒幕を用意する必要もなかった気がする……と私は思ったのだが、息子は「レイ博士とのび太は似ている部分があるけれど、レイ博士は皆が自分と同じになることを望んで、のび太は皆に違っていてほしいと望んだ、という対比になっている」と分析していて、なるほどと納得した。確かにね。

 

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