ザ・スクエア 思いやりの聖域』のリューベン・オストルンド監督最新作。カンヌ映画祭パルムドール受賞。

 

人気モデルでインフルエンサーのヤヤと、微妙なポジションのモデルのカール。インフルエンサー特典で豪華客船の旅に出た彼らは、船内でさまざまな大富豪たちと遭遇する。しかし、待ちに待ったキャプテンディナーの夜、悪天候から船は酷く揺れ……。

 

ストーリーをシンプルに書くとつまらなそうだな笑 前作でもそうだったが、本作はとても散文的でパッチワークのように構成されている。リッチなブランドとチープなブランドでのモデルのふるまいの違いを揶揄するオープニングから始まり、奢る奢らないで議論する若いモデルカップル、下品で俗っぽいトークを繰り広げるロシアの大富豪、頭のネジが飛んでるとしか思えない金持ち女、いかにも上品そうな武器製造業の夫婦、高額のチップのために客の奴隷のようにふるまう白人スタッフたち、目につかない場所で淡々と清掃などを処理していくアジア系スタッフ、そもそも表にすら出てこない黒人スタッフ……格差に満ちた社会の縮図は醜く滑稽で、豪華客船のゴージャスさも表面的で虚しく見える。

 

最初から皮肉と居心地の悪さは期待通りなのだが、船が揺れまくってからはまさにカオス!間違っても飲食しながら観ない方がいいので要注意。ありとあらゆるところでまき散らされるゲロ、必然性がまるでない悪趣味な極まりない人物配置、しつこくていらいらする共産主義と資本主義の酔っぱらい問答など、目からも耳からも精神的にも不愉快な刺激が満載。正直、ここから船が沈むまでが一番おもしろかった。

 

『ザ・スクエア』はもっとわかりにくかったものの、こういうわけのわからないテンションの不愉快シーンがもっと多かった気がするのだが、本作はずっとわかりやすい分、前作に比べると冗長に感じてしまった。でもね、十分おもしろいからご安心を。

 

どんなに金があろうが権力があろうが、ゲロとクソにまみれてしまえば人間同じなわけで。さらにいうと、金が意味をなさない状況になれば権力構造など簡単に変化してしまう。金をチラつかせて悪気もなく他人を搾取していた人間が、搾取される側に転落することもあれば、男女の権力構造が逆転することもある。女性だからといって奢られて当然という考え方を非難していた男性が、食べ物を得るために性的に搾取されることに甘んじることにもなり得る。相変わらず酷くグロテスクに「人間」を描き出す手腕はさすが。

 

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