安田弘之の同名コミックを今泉力哉監督が映画化。

 

元風俗嬢のちひろさんは、海辺の町の弁当屋で働いていた。明るくてつかみどころがなく、どこか孤独を感じさせるちひろさんは誰にでも分け隔てなく接し、周りの人々の生き方を少しずつ変えていく。

 

有村架純というキャスティングは秀逸。どこか孤独を湛えていながらも明るく穏やかで、それでいて鋭さや厳しさも垣間見せるちょっとエロい「ちひろさん」というキャラクターにピッタリだった。

 

ちひろさんは周囲の人々の常識や普通に疑問を投げかけ、自分軸で物事を捉えなおす重要性を教えていくキャラクターだ。と、書くと説教くさい感じがするが(実際、そういう要素もあるにはあるのだが)、ちひろさん自体の「自分軸」がけっこうぶっ飛んでいるというか、ときに常識レベルではない飛躍をするのがおもしろい。町の人々のキャラクターも瑞々しくて個性的なので、最初から最後まで飽きることなく見ることができた。また、トランスジェンダー当事者をナチュラルに起用しているのもポイント。劇中でそのことにセリフで一切触れていないのが◎。

 

ただ、ちひろさんみたいな人間はいない。ほどよくエロくて、ほどよく優しくて、ほどよく寂しげで、ほどよく良いこと言って、ほどよく距離感わきまえていて、なに言われてもまったく怒らない女性は……いない。店でキレちゃった知り合いにいきなりキスして「したくなっちゃった」なんて言う弁当屋、いない。これをファンタジーだと割り切れるか、ミソジニーを内包した男の妄想だと受け取るかによって本作への評価はかなり変わってくるだろう。

 

ちひろさんのセリフひとつひとつにはかなり共感した部分もあるし、当事者キャスティングという意味でも私としては評価したいのだが、最初から最後まで肌に絡みつくような気色悪さを覚えたのも事実なので、なんとも感想が難しいんだなあ。

 

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