突然ですが、イースター休暇でロンドンにいます。久々にミュージカルを堪能中!というわけで、まずは家族で観た『THE BACK TO THE FUTURE THE MUSICAL』から簡単に感想をば!

 

言わずと知れた1985年の名作タイムスリップ映画のミュージカル化。バリバリの新作。

 

ストーリーはほぼ映画のまま。ドクが作ったタイムマシン化されたデロリアンに乗ったマーティは、30年前にタイムスリップしてしまう。が、ひょんなことから父親と母親の恋愛のきっかけを阻害してしまい、未来が変わってしまうことに気付く。マーティは両親を恋に落ちさせ、さらに30年後に戻ることはできるのか!?という内容。

 

映画でおなじみの曲も使っているし、80年代と50年代の雰囲気をガッツリ出したポップでチープな世界観も◎。映像、書割、引枠を駆使した頻繁な転換は良い意味でゴチャゴチャとしていて、原作映画が持つ雑多で賑やかな空気感を上手く演出していた。

 

ミュージカルナンバーは基本的に楽しくて、グリース、プロデューサーズ、キンキーブーツなどといった作品に似た感じ。群舞も多くアンサンブルは多種多様な衣裳に着替えて踊りまくる。全体的にとても楽しい作品に仕上がっていた。

 

タイムスリップシーンは期待通りの大掛かりなもので、おそらくとてつもなくお金がかかっている。技術的にもかなり難しそうで、私が観た回ではクライマックス直前で一度中断してしまった。その分、会場は大盛り上がり!「うわー、これ仕込みにどれくらい時間かかったんだろう」と元裏方としては呆気に取られてしまった。

 

キャストも総じて達者なのだが(まだオリジナルキャストだしね)、特にドク役のロジャー・バートがとんでもなく上手い。歌、芝居、群舞と何でも軽々とこなす上にギャグシーンのセンスも抜群。ロジャー・バートは『ヘラクレス』の声で有名だが、『プロデューサーズ』のカルメン役や『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』のスヌーピー役などミュージカルでバリバリに活躍してきたベテラン。(日本でドクを演じるとしたら市村正親しか考えられないが、体力的に持つかな……)

 

マーティ役はぶっちゃけ歌が歌えて爽やかならば誰でもいいかな(←おい)。映画よりもキモオタ味が強くなっている父親役の方が難しそう。

 

全体的なギャグセンスはやや古めなので、原作を知らない若い世代がどう感じるかはやや不安。そして、これは唯一にして最大の欠点だとおもうのだが、ジェンダー観などが致命的に古い!そもそも「ぶん殴った方が勝ち」というノリをなぜ新しくしなかったのが疑問だし(全体のストーリーは変えずにその辺りを変えることはできたと思う)、あるシーンがものすごく気持ち悪くて倫理的にアウトだと感じた。

 

作品を生み出すとき、「なぜ今なのか」を明確にすることは何よりも重要だと私は考えているのだが、本作は楽しいがその「なぜ今なのか」がよくわからなかった。もちろん、我々の世代(と、もう少し上の世代)にとっては心から楽しめるミュージカルになっているし、演出もアッと驚くものがあって魅力的だ。だからこそ、もう少し踏み込んで「なぜ今」を追求してほしかったというのが正直な気持ち。ものすごく面白かったけれど、惜しい。

 

最後に日本上演の可能性について。日本で上演できたらきっとウケるし、キャスティングも色々考えられるが(ドク役はかなり人を選ぶけど)、なんといってもあのセットとシステムにおそらくお金がかかりすぎるので、ちょっと厳しいかもなあ。

 

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