プぺルミュージカルのキャストがゴリゴリのミュージカル俳優で固められていたことで、ここ数日かなりミュージカルファンはザワついていた。じっと様子をうかがっていた。

 

西野氏のオンラインサロンについては、私も良い印象は持っていない。無茶苦茶なことで金を取るなあと思うし、鼓舞しているのか脅しているのかよくわからない言い回しで「信者」を搾取しているようには感じる。確かに脅迫しているわけでもなければ、押し売りをしているわけでもないみたいではあるが、「好きで参加しているんだからいいだろ」と割り切る事案ではない気がする。実際、息子が大学生くらいになって入れ込んでいたら心配になるしね。だから、多くの人が示すアレルギー反応のようなものは理解できる。(数日前の電車賃のやつはさすがにアウトでは?と思ったが。詐欺にはならないのか?)

 

しかし、では他の作品が全部クリーンなのか?と言われると「うん」とも言えない。例えば、『舞台『私のホストちゃん』の入店テストに驚いた。』でも書いた「私のホストちゃん」ビジネスモデルは、私の倫理観では完全にアウトだ。ファンの心理と懐を蹂躙し、役者に妙なプライドの張り合いをさせ、しかもできあがったショーはグダグダの馴れ合い。えげつないというのはああいうのを指すんじゃないかと思う。

 

もちろんアイドル商法も疑問だし、経験が乏しい素人同然の役者に歌わせたり躍らせたりする某テニスミュージカルも苦手。ミュージカルの物販がガチャ形式だったりするのも変だと思うし……「ファンの気持ちにつけこんで金を巻き上げようとする」という行為は、見渡せばかなりの頻度で確認できる気がするのだ。とどのつまり、何がセーフで何がアウトなのかは各々の判断でしかないのだろう。許せないならば観に行かないという選択しかないよね。

 

以上を踏まえた上で、プペルのPだという若者のブログをめぐるいくつかの発言について、ちょっと曲解がある気がしたので商業ミュージカルのP体験がある者としてコメントをば。

 

①事務所との出演交渉について

 

まだ若いPがブログで主演との交渉のために事務所に行ったことを書いたのを受けて、「やっぱり事務所が勝手に決めたんだ!」と怒っている人を見かけたけれど、どんな場合であっても出演交渉は事務所と行う。なぜならば、それこそが事務所(エージェント)の仕事だから。飲みの席とかメールで「興味ある?出てくれない?」と聞いて本人がOKすることは実際にあると思うけれど(私も似たようなことをしたことはある)、そういうときでも「では、詳しい話は事務所とやってね」って流れになる。スケジュールやギャラなどの条件は必ず事務所と詰める(ときには本人や事務所の偉い人が同席することもある)。※もちろん、個人でやっている人は本人との交渉になる。つまり、あの記述をもってオファーを受けたのが本人主導なのか事務所主導なのかは判断できない。

 

②ミュージカル観劇本数の少なさについて

 

Pの「2か月で10本観た」という記述に関して、少なすぎると呆れている人が大勢いた。でも本数で叩くのはちょっと……どうなんでしょう?

 

日本で大きいミュージカルを作っている会社の多くは、ミュージカル以外のビジネスも行っている。映画製作・配給だったり、不動産だったり、テレビ局だったり、歌舞伎興行だったり、芸能事務所だったり。ミュージカル製作は、あくまでも会社の事業のごく一部にすぎない。

 

ということは、人事異動もあるし異動希望が通らないことも大いにある。ミュージカルが大好きなのに一生その部署に行けなかったり、ミュージカルなんて1ミリも興味ないのにミュージカルづくりに携わることもあり得る。私はたまたま小学生のころからのミュージカルファンだったし小遣いもバイト代もミュージカルにつぎ込んできたけれど、それが多数派だとは思えない。ミュージカルのスタッフやキャストにも「ミュージカルなんて何の興味もなかったけれど、気づいたらこの世界にいた」という人は無数にいる。そもそも私は、コアなファンだから良い作品が作れるとも思わないしね。特にPは色々な視点を持っていた方がいいという側面もある。

 

ミュージカルのチケット代は高いから、好きで好きで仕方がなくても年に1回しか観られない人もいるわけで。回数で「ミュージカル愛」を測るのはちょっとフェアじゃない気がするのだ。もちろん、「ミュージカルをやろうとしている人間が、2か月で10本で威張るな!」という意味であり、一般的に観劇本数でマウント取ってるわけじゃないのはわかるよ?わかるけれど、彼は大学を卒業したばかりの社会人1年生なわけで、これからどっぷりミュージカル愛を育むかもしれないじゃない。西野氏を崇拝しすぎではあれど、彼がPとしてやっている作業自体はそんなにおかしくないと思うから(私も最初の担当作品では全員に「何もわからないので教えてください!」って頼んで回って教えてもらってたよ)、「どうせミュージカルへの愛もないんでしょ」は厳しすぎるんじゃないかなあ。しかもそれを観劇本数で判断して馬鹿にしてしまうと、他の「観たくても観られない人」や「まだファン歴が浅い人」をも傷つけるかもしれないから、ちょっと引っかかってしまいました!(怒らないで)

 

③ちょこまかお金を取っている件について

 

これはもう、ケースバイケースかなあ。プランナーとの打ち合わせに参加できたり、大掛かりな舞台セットを見学できたりっていうのは良いんじゃないかと思うけれど、経験がないスタッフのトークをダラダラ聞いたり、稽古場に人を入れたりっていうのはちょっとねえ……とはいえ、私もゲネプロにお客さんを入れたことがあるのであまり強くは言えないし(感染症が流行ったりはしていない数年前ですが)。

 

結局のところ、資金源をどう考えるかなんだよなあ。チケット代収入だけでは製作費の上限が決まってしまうから、普通はスポンサーから協賛金をもらう努力をするし、そのためにロビーでサンプリングをするとか、ポスタービジュアルにスポンサーロゴを入れるなどのメリットを用意するわけで。その「スポンサー」が今回は企業じゃなくて個人なんです!そのためのメリットが各種参加権なんです!と言われたら「そうですか」としか言えない気もする。

 

マルチだからダメ、カルトじみてるからダメ、だけではなんだかスッキリしない。しかも、『えんとつ町のプペル』で書いたように、私は映画版をクソだとは思わなかったのだ。大傑作とも思わないがちゃんと考えられていると感じたし、もっと酷いミュージカルは今までたくさんあった。先述のブログなどに載っていたミュージカル版に向けての楽曲動画を観ても、一定のクオリティは担保されているんじゃないかと想像する。だから、「うわあひどい!こんなの即刻やめるべき!」と反射的に言えなかったりする。もちろん、作品が良ければすべて無罪だとも思わないので難しいのだが……もう少し悩むことにします。(私は西野氏に批判的な立場ではあるので、そこは誤解しないでね!)

 

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