これを観た!映画化もされた東京サンシャインボーイズの代表作。当時のメンバー+αの錚々たるメンバーで、zoomにて実施。純粋に団本をそのまま読んでいくという感じだったのだが、とても面白かった。

 

舞台の稽古は最初に顔合わせがあり、その後で読み合わせをすることが多い。私はこの読み合わせに立ち会うのが大好きだった。台本の理解度、経験値、瞬発力など、役者が持つ力がハッキリわかる場だからだ。上手い人が読み上げる瞬間に、平面だった世界がパタパタと立体的に変化していく……そんな感覚。そういうときはゾクゾクして鳥肌が立ってしまう。

 

この企画は上手い人ばかりが参加しているので、ゾクゾクがずっと持続する。見ていくうちに、彼らが机を囲んで座っているイメージが沸き上がり、それぞれのちょっとした仕草までもが見えてくるような気がするから不思議だ。生の舞台とは違うのだが、舞台の良さを久しぶりに少し味わうことができた。

 

ところで、Twitterを最近あまり見ていない。いかに演劇界が嫌われているのかを思い知らされるからだ。

 

他業種と比較して語ったら反感を買うこととか、なんかちょっと浮世離れして聞こえるとか、まあ色々と良くない表現があったのは承知しているのだが、こんなにも苦しい状況にあるのにこれほど嫌われるって……完全にキリギリスだと思われているんだなあと実感せざるを得ない。

 

『ビジネスとしての舞台』という記事でも書いたが、舞台で得られる収益には限りがある。チケットの上限が決まっているからだ。しかも、初期投資もかなりかかる。美術の発注なんて、数か月前から始めないと間に合わない。つまり、舞台美術や衣裳が豪華な作品は、数か月前から億単位で金が出ていくということなのだ。

 

稽古は1ヶ月ないし1ヶ月半が通常なので、現時点で秋の大型公演の中止が決まったりしているのは、稽古以外の要因があるからだろう。先ほど述べた美術発注だったり、海外作品ならば権利料の最初の支払だったり、ガツンと金がかかるタイミングが差し迫っているのかもしれない。とにかくお金がかかるのに儲からないのが舞台。それが事実。それが真実。少なくとも日本では。

 

真っ先に公演を中止し、何千万、何億、何十億の損失を被った舞台主催者たち。そして、一気に仕事を失ったスタッフやキャストたち。なくなってしまった公演をもう一度やるのは、どうがんばっても何年も先になってしまう。だから、いま生き延びるために補償が必要。それだけのシンプルな話なのに、「ほしがってばかり」「努力が足りない」「想定不足」「好きなことをしているんだから我慢しろ」と、そりゃもう酷い言われようだ。

 

グッズで稼げば?とか配信すれば?とか言ったところで、まずグッズでチケット代に迫るような収益を得ている作品はかなり限られる。2.5次元はかなりグッズで稼いでいるような気がするものの、いわゆる大型ミュージカルでは、どんなにグッズが売れたとしてもチケット代の利益には遠く及ばないはずだ。それに、2.5次元舞台だって衣裳をつけたビジュアルがなければ大きい売り上げは見込めないわけで、先の公演では売れるグッズを作ることすら難しいだろう。もちろん、小さい舞台は言わずもがな。

 

また、そもそも中止になった舞台を収録することはできないので、舞台映像を配信するのは不可能。映像はありだし刀剣乱舞も無料配信をやっていたが、それも舞台映像をしっかり収録した作品に限られる(ちなみに、収録にはお金がかなりかかります)。それに、配信でチケット代と同じ金額を取るのは無理がある。「12人の優しい日本人を読む会」のような企画を実施するのは素晴らしい。しかし、この配信で億単位の収益を得ることなど到底できないわけで、損失の根本的な穴埋めにはならないのが現実だ。

 

そもそもビジネスとして儲かりにくい演劇業界は、今回のコロナ禍で完全に詰んでいる。声を上げている人たちは裕福に見えるかもしれないが(実はそうでもなかったりもすると思うけど)、彼らが声を上げているのは、彼らの向こうにいる多くの演劇人たちのためだ。

 

ただ……こうなってしまったのは、これまでの演劇業界の態度のせいもあったと思う。限界があるビジネスモデルの欠陥については誰もが認識していたはずだし、「舞台を観に来る人=特別な趣味の人」というイメージを大きく変えることができずにここまで来てしまったのは、演劇界の責任でもある。今回のコロナ禍においても、ミニシアター界のようにすばやく横の連携を取ることができていなかったように見える。ようやく支援の動きが現れ始めたが、映画界に比べてアピール力が足りないこともあってか、集まっている金額の桁が違う。いずれにしても、アフターコロナで演劇界は大きく変わらざるを得ないだろう。願わくば、それまで演劇人たちが無事に凌げるといいのだが……今のままだとかなり難しいかもしれない。