『ビリー・エリオット』の平日ソワレが17時45分開演という件。

まあ、平日ソワレは少ないし、特にこの公演はスタートが早いね。確かに。

 

平日ソワレが少なかったり、開演時間が早かったりするのには理由がある。

まず、私が担当した舞台では例外なく、平日ソワレが最も売れなかった。

どんなに回数が少なかろうが、売れない。19時開演だろうが19時半開演だろうが、売れない。

そもそも若い世代の絶対数が少ない。まあ、大型ミュージカルはチケット代も高いしね……。

ソワレ多めに設定することが多い2.5次元舞台とは、根本的に観客の世代割合が異なるのだ。

 

また、劇場の退館時間の問題もある。

海外ミュージカルの場合、上演時間は最低でも2時間半にはなる。

大抵の劇場の退館時間は22時なので、単純計算でも19時半には開演しなければいけない。

ただ、終演してもすぐに退館できるわけではない。

お客さんの楽屋面会や舞台の片づけ・清掃、衣裳の洗濯&干しなどの作業がある。

(キャストや衣裳が多い作品だと、洗濯作業が尋常じゃなく大変+時間がかかる)

23時を過ぎると深夜扱いになって、劇場付きスタッフのタクシー代や宿泊費が発生することもあるし、

簡単に延長料金といっても、決して少ない金額では済まないことが多い。

 

大型ミュージカルで黒字が出るほどチケットを売るのは

決して簡単なことではないし、多くの作品は赤字覚悟だったりトントンだったりする中、

「平日ソワレの公演数を増やす」「平日ソワレの開演時間を遅くする」のは

けっこう覚悟のいることだというのは確かだ。実感として。

逆にいうと、3時間を超えてくる作品で、18時半や19時開演に設定されているものは

ある程度身を削った後の英断だと判断することもできるだろう。

 

そして、子役問題。

 

ご存じの通り、子役の就労時間は基本的に20時まで。

申請して特別に許可された場合のみ21時までと定められている。

それ以外にも、1日や週の就労時間の合計時間が決まっていたり、

こまかーい制約がある。もちろん、学校の許可証明などもいる。

 

20時から21時に延びたのも、最近の話。2004年かな?

ちなみにこれ、22時までに延ばしてほしいという要望を受けての21時。

日本のエンタメ界は、22時までOKにしてほしいと訴え続けてきた。

 

『ビリー・エリオット』の場合、絶対にカーテンコールまで

ステージ上に登場させておきたいと考えると

18時より前に開演時間を設定するのは妥当な判断だと私は思う。

スケジュールを確定する段階では、実際の上演時間は分からないので

本編をMAX3時間だと想定するのは自然な考え方だろう。

(英語の作品を日本語に直すと、普通は上演時間が大幅に延びるため)

 

ちなみに、子役が最後まで出演する招聘公演の開演時間が遅かったりするのは、

この日本のルールが適用されていないから。その代わり、同行者が多かったりする。

例えばアメリカだったら、アメリカの厳しいルールに従っているのだ。

 

本当は、20時開演くらいだと行きやすい。私もそう思う。

そうすれば若い世代も足を運びやすいのでは?というのもわかる。

平日ソワレの公演数自体は増えなかったとしても、

開演時間が遅くなれば、行きやすい人が増えるのは確かだし。

 

子役がメインで活躍する作品も増えてきたし(『マチルダ』とかも)、

なんとかならんものかという意見には同意するのだが、うーむ。難しい問題だ。