エドガー・ライト監督。

 

幼い頃に両親を失った交通事故の後遺症で、止まない耳鳴りに苦しむ青年・ベイビー。

彼は天才的なドライビングテクニックの持ち主で、強盗の逃がし屋をしている。

とある事情から逃がし屋をやめられなかったベイビーだが、遂に最後のお勤めを終える。

恋をしたダイナーのウェイトレスと新しい人生を歩もうとしたのも束の間、

「もう1回だけ」と、ボスから新たな強盗計画の依頼がきて……。

 

こう書くと、ありきたりなカーチェイスもののクライムサスペンスのようだが、

『ベイビー・ドライバー』は、アクション映画の枠組みを使ったミュージカル作品だ。

といっても、歌ったり踊ったりするわけではない。

 

耳鳴りを消すため、ベイビーは常にイヤホンで音楽を聴いている。

そして、映像は全てその音楽に合わせて展開していく。

カーチェイスはもちろん、通りを歩くベイビーの足取り、

恋に落ちかけている若者たちの身のこなし、銃声……。

作中に登場するあらゆる効果音や動作が、音楽やリズムと同期していく。

 

なにかしら「きっかけ」となる音や間があり、

様々なタイプの音楽が流れだす。そして、映像は音楽に合わせて繰り広げられる。

歌唱はなくとも、タップやバレエといったステップはなくとも、

『ベイビー・ドライバー』はミュージカル映画としての要素を備えている。

しかも、ナンバーの数は通常のミュージカルの1.5倍はある。

 

次から次へと登場する様々なタイプの音楽に酔いしれ、

圧倒的な疾走感に快感を覚える。B級映画っぽい力の抜けた雰囲気も相まって

『ベイビー・ドライバ』は、ちょっと他では体験できない気持ち良さを与えてくれる。

 

ケビン・スペイシーの役の設定が雑だったり、

あまりにも強引な展開があったりと

ツッコミどころも多いのだが、それも含めて中毒性がハンパない。

絶対に映画館で観るのがおすすめ!急いで!