<概要>

森美術館×ポンピドゥー・センター・メス×エルメス財団、共同企画!

19世紀から20世紀にかけて、ヨーロッパでは数学、機械工学、生物学、地質学や考古学の探求の中で「シンプルなかたち」の美学が再認識され、工業製品や建築のデザインなどに多大な影響を与えました。同様に、その品格ある魅力は多くのアーティスト達を魅了し、近代美術の多数の名作を生み出しました。
一方、このような単純で美しい「シンプルなかたち」は、自然の中や、世界各国のプリミティブアート、民俗芸術、伝統文化の中にも、数多く見出すことができます。日本においては、工芸品や茶道具、仏像や禅画などに同様の美学が体現されています。
本展は、このような古今東西の「シンプルなかたち」約130点を9つのセクションで構成します。古くは先史時代の石器から、現代アーティストによるダイナミックで先鋭的なインスタレーションまで、地理的なひろがりと歴史的なつながりを示しながら展望し、時空を越えた普遍的な美を描き出します。「シンプルなかたち」が備える普遍的な美は、私たちが生きる上で真の豊かさとは何かを問い直すことでしょう。(森美術館HPより)

<感想>

最終日前日に駆け込みで観賞。

プリミティブから現代まで、さまざまな作品を
"シンプル"という概念で配置していく。

展示構成は以下の通り。

1:形而上学的風景
2:孤高の庵
3:宇宙と月
4:力学的なかたち
5:幾何学的なかたち
6:自然のかたち
7:生成のかたち
8:動物と人間
9:かたちの謎

"シンプル"とは、原始的であり、形而上学的であり
機械的であり数学的であり、芸術的である。

マレーヴィチやカンディンスキーのような主張とも
デュシャンのようなアプローチとも確かに通じているし
(彼らの作品の展示はないけれど)
そういったシュルレアリスム的概念ももちろん織り交ぜてはいる。

しかし、そういった論理的なコンセプトではなく、
この展覧会ではもっと感覚的な心地よさを追及しているように感じた。

ずっと眺めていたい、どこか懐かしい感じがする…。

誰もが共通して本能的に心地よいと感じる、
そのポイントを模索しているような展覧会だった。


たとえば、こちらの作品↓

{105809A9-1554-4900-B084-4740787581A9:01}
大巻伸嗣《リミナル・エアー スペース―タイム》2015年

曇り空なのが残念だが、六本木の街を背景に、
フワフワ浮遊する布地以外のすべての時間が止まったような
そんな不思議な多幸感がある作品だ。
日が暮れて星空が見えるまで、ずっと眺めていたいと思わせる。

ところで、今回共同企画のポンピドー・センター・メスは
数年前にロレーヌ地方にオープンしたポンピドー分館である。

実は、ちょうど当時別件でポンピドーセンターに
出張に行っていた私は、オープン直前のメスを見せてもらったことがある。

牧歌的な風景の中に現れる個性的な建物。
しかし、異様に近代的なパリのポンピドーセンターとは違い
ホワイトと木で形作られたその外観は、不思議と唐突感はなかった。

展示エリア内部も、直方体が積み重なっているような
きわめてシンプルなつくりになっていたと記憶している。

今回の展覧会を見て回りながら、
あのときの心地よさと、帰りのTGVの中で食べた
キッシュロレーヌの味を思い出した。