秩父三十四カ所巡りも最終章に入った。
今日は第三十一から最終の三十四番札所を廻る予定だが、
こちとら西武秩父駅下りたら、手段はバスと徒歩だ。
そんで、鬼連れ(元興寺と朱の盤、イノコは鬼ではないが)だ。
しかも第三十一番札所は、最寄りバス停から徒歩で1時間ちょい歩く山の上だ。
(これは今日、四か所廻るのムリだろ)
私はそう思っていたが、私の後をついてくる
元興寺と朱の盤はウッキウキな足取りだ。
たまに変な鼻声が聞こえてくると思ったら、
花粉症気味の元興寺が、鼻歌を歌っている声だった![真顔](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/042.png)
![真顔](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/042.png)
やっとたどりついたお寺の入り口には、
石造りの仁王様が二体立っており、
「般若心経を唱えながら上ってください」みたいな
ことが書かれていた。
(絶対1回唱えただけじゃ石段上りきらないよな)
と思いつつ、唱えながら上る。
でも気が紛れるから、1回だけなら唱えながら上った方が楽。
2週目は「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時」で
あっさり止めた。
多分、般若心経を4回弱ほど唱えたくらいで、
第三十一番札所、観音院に到着した。
石段を振り返ると、イノコがいた。
私「がごぜとバンバンはどうした?」
イ「疲れたから、下で待ってるって」
はあ!?
私「下りたらアイツら殴っていいか?」
私の握りこぶしに、イノコはこくりと頷いた。
私とイノコは本堂にご挨拶し、
御朱印を頂くついでに鯉の餌が売られていたので、
買って滝の下にいた鯉に餌をやった。
その傍にお不動さんもいらっしゃった。嬉しい。
山道は大変だったけど、とても気持ちの良い場所で、
また来たいなあと思った。
来て良かったと疲れた足を気にしながらも長い石段を下りると、
仁王様の前に腰かけて元興寺と朱の盤が
きゃっきゃっと世間話をしていたが、
私の姿を見て、転げるように山道を下り、
道の途中にある蕎麦屋に入っていくのが見えた。
怒り顔の私と、無口なイノコがその蕎麦屋に入っていくと、
「こっち、こっち~」と手を振って、
既にテーブルについている鬼2人がいた。
元「さあさあえ~、よ?」
朱「まあまあまあ」
元「さあさあえ~、よ?」
朱「まあまあまあまあ」
うるせえ。
私は2人がしきりに勧めてくるビールをぐいと飲んだ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240504/16/umion-u/d0/36/j/o0810108015434247563.jpg?caw=800)
天ぷら蕎麦としゃくし菜、こんにゃくなどが入っている
餃子を注文した。
美味しい昼食に大変満足し、
次の第三十二番札所を目指すぞと気合を入れる。
店から出たところ、輪入道がいた。
例の鬼2人が呼んだらしい。
歩いて廻る気は無いのだろう。
「おまえら、なんなん?
ついてきたいって言ったよな?」
私が怒りを押し殺して言うと、
鬼2人はあわあわと輪入道へ乗り込んだ。
ここまで延べ2時間近く山道を歩いた私は、考えた。
「分かった。次の寺の最寄りのバス停まで乗って行こう」
そう言って、輪入道に乗り込んだ。
バス停で私は下してもらい、イノコも下りた。
元興寺と朱の盤は寝たふりをしていた。
朱の盤の鼻寸前までこぶしを振り下ろすと、
「きゃっ」と言って目を開けた。
「わにゅ、さんきゅ」
礼を言うと、輪入道は何故かすまなそうな顔をした。
「いいんだよ。私はある程度、徒歩で廻りたいんだ」
イノコは探しているものがあるらしい。
この後、また山道を2時間ほど歩くことになった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240504/16/umion-u/23/e7/j/o1080081015434247565.jpg?caw=800)
山道はきつかったけど、それでもたどりつけたのは嬉しい。
第三十二番札所の法性寺も良いところだった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240504/16/umion-u/d3/c3/j/o1080081015434247567.jpg?caw=800)
法性寺にたどりつたいのは16時だったので、
今日はもう次の寺は廻れない。
私もイノコもよれよれになりながら、
法性寺で教えてもらったバス停にたどり着いて、
西武秩父駅へ向かった。
帰りのバスは混んでいて、30分ほど立っていた。
西武秩父駅からの電車も混んでいて、
1時間ほど立っていて、結局山道を超える際に、
道端の石に腰かけて休んだのを最後に、
4時間ほど立ちっぱで、家に着いたのは20時過ぎだった。
「くぅ~お土産、あんまりゆっくり選べなかった~」
私が玄関で座り込み嘆いていると、
トン、と目の前に日本酒が置かれた。
顔を上げると、誇らしそうな笑顔を浮かべた元興寺がいた![真顔](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/042.png)
![真顔](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/042.png)
次に第三十三番札所と三十四番札所を廻れば、
秩父三十四カ所巡りは結願だ。
ゆっくり大事に二か所廻ろう。
そして、元興寺と朱の盤は二度と連れていかねえ。
私は2つの誓いを立てながら、背負っていたリュックを下して、
食器棚からマイお猪口を取り出した。