ひとりぽっちの妖怪暮らし20240505秩父巡礼第三十一と第三十二番札所 | ソラトスレスレノウミ

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秩父三十四カ所巡りも最終章に入った。
 
今日は第三十一から最終の三十四番札所を廻る予定だが、
こちとら西武秩父駅下りたら、手段はバスと徒歩だ。
そんで、鬼連れ(元興寺と朱の盤、イノコは鬼ではないが)だ。
しかも第三十一番札所は、最寄りバス停から徒歩で1時間ちょい歩く山の上だ。
 
(これは今日、四か所廻るのムリだろ)
 
私はそう思っていたが、私の後をついてくる
元興寺と朱の盤はウッキウキな足取りだ。
たまに変な鼻声が聞こえてくると思ったら、
花粉症気味の元興寺が、鼻歌を歌っている声だった真顔
 
 
 
やっとたどりついたお寺の入り口には、
石造りの仁王様が二体立っており、
「般若心経を唱えながら上ってください」みたいな
ことが書かれていた。
 
(絶対1回唱えただけじゃ石段上りきらないよな)
 
と思いつつ、唱えながら上る。
でも気が紛れるから、1回だけなら唱えながら上った方が楽。
 
2週目は「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時」で
あっさり止めた。
 
多分、般若心経を4回弱ほど唱えたくらいで、
第三十一番札所、観音院に到着した。
 
 
石段を振り返ると、イノコがいた。
 
私「がごぜとバンバンはどうした?」
イ「疲れたから、下で待ってるって」
 
はあ!?
 
私「下りたらアイツら殴っていいか?」
 
私の握りこぶしに、イノコはこくりと頷いた。
 
 
私とイノコは本堂にご挨拶し、
御朱印を頂くついでに鯉の餌が売られていたので、
買って滝の下にいた鯉に餌をやった。
その傍にお不動さんもいらっしゃった。嬉しい。
 
 
山道は大変だったけど、とても気持ちの良い場所で、
また来たいなあと思った。
 
 
来て良かったと疲れた足を気にしながらも長い石段を下りると、
仁王様の前に腰かけて元興寺と朱の盤が
きゃっきゃっと世間話をしていたが、
私の姿を見て、転げるように山道を下り、
道の途中にある蕎麦屋に入っていくのが見えた。
 
 
怒り顔の私と、無口なイノコがその蕎麦屋に入っていくと、
「こっち、こっち~」と手を振って、
既にテーブルについている鬼2人がいた。
 
元「さあさあえ~、よ?」
朱「まあまあまあ」
元「さあさあえ~、よ?」
朱「まあまあまあまあ」
 
うるせえ。
 
私は2人がしきりに勧めてくるビールをぐいと飲んだ。
 
 
天ぷら蕎麦としゃくし菜、こんにゃくなどが入っている
餃子を注文した。
美味しい昼食に大変満足し、
次の第三十二番札所を目指すぞと気合を入れる。
 
 
店から出たところ、輪入道がいた。
例の鬼2人が呼んだらしい。
歩いて廻る気は無いのだろう。
 
「おまえら、なんなん?
ついてきたいって言ったよな?」
 
私が怒りを押し殺して言うと、
鬼2人はあわあわと輪入道へ乗り込んだ。
 
ここまで延べ2時間近く山道を歩いた私は、考えた。
 
「分かった。次の寺の最寄りのバス停まで乗って行こう」
 
そう言って、輪入道に乗り込んだ。
 
 
バス停で私は下してもらい、イノコも下りた。
元興寺と朱の盤は寝たふりをしていた。
朱の盤の鼻寸前までこぶしを振り下ろすと、
「きゃっ」と言って目を開けた。
 
「わにゅ、さんきゅ」
 
礼を言うと、輪入道は何故かすまなそうな顔をした。
 
「いいんだよ。私はある程度、徒歩で廻りたいんだ」
 
イノコは探しているものがあるらしい。
 
この後、また山道を2時間ほど歩くことになった。
 
 
山道はきつかったけど、それでもたどりつけたのは嬉しい。
第三十二番札所の法性寺も良いところだった。
 
 
法性寺にたどりつたいのは16時だったので、
今日はもう次の寺は廻れない。
私もイノコもよれよれになりながら、
法性寺で教えてもらったバス停にたどり着いて、
西武秩父駅へ向かった。
 
帰りのバスは混んでいて、30分ほど立っていた。
西武秩父駅からの電車も混んでいて、
1時間ほど立っていて、結局山道を超える際に、
道端の石に腰かけて休んだのを最後に、
4時間ほど立ちっぱで、家に着いたのは20時過ぎだった。
 
「くぅ~お土産、あんまりゆっくり選べなかった~」
 
私が玄関で座り込み嘆いていると、
トン、と目の前に日本酒が置かれた。
 
顔を上げると、誇らしそうな笑顔を浮かべた元興寺がいた真顔

 
 
次に第三十三番札所と三十四番札所を廻れば、
秩父三十四カ所巡りは結願だ。
 
ゆっくり大事に二か所廻ろう。
そして、元興寺と朱の盤は二度と連れていかねえ。
 
私は2つの誓いを立てながら、背負っていたリュックを下して、
食器棚からマイお猪口を取り出した。