すぐにわかった。
一年と五ヶ月ぶりだけれど。
こんな時間に、こんな風に、こんな電話のかけ方をしてくるのは、あなたしかいないもの。
「仕事は?うまく行ってるか?」
「仕事だけじゃなくて、今までで今が一番バランス良いみたい。すごいいい感じよ」
「こないだも聞いたぞそれ。進歩がないなぁ、お前」
あなたも進歩がないじゃない!なのに、いつもそうやってうれしそうに私を小バカにする。
「最近、どう?」
「え?ダンナと?うん。上手くいってる」
「その声じゃ、相変わらずみたいだな」
バカ、久しぶりに電話してきてわかった風な口きかないで?
「俺、多分もう結婚できない」
「は?最近彼女いないの?」
「釣るのは簡単だけど、本当に好きになるのは、難しい」
「そっかぁ、でも私 あなたの遺伝子は残した方がいいと思うの。チャンスがあったら誰かに産んでもらってね」
「・・・お前は・・・」
「ん?」
「お前は心の放浪癖があるからなぁ。それをコントロールできる男と結婚できて感謝しろよ、ダンナさんに」
心の放浪癖。
わたしたちがふたりでひとつだって信じて疑わなかった頃、私のそれが出るたびに、あなたは真っ直ぐに向かい合ってくれてたわねぇ。どんな時も。
俺、まだお前の事抱けるかなぁ 。
ばかね。あの頃と違って私、すっかり加齢しちゃったもの。
ソウカ、マタチョクチョク レンラク スルヨ
あなたも放浪してるのね。
そう思ったけど、言わずに電話を切った。
誰もいない、窓から晴れた空の見えるリビングで。