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ヨンウォンの使者たち

第  八  章  X使者の復活

第  一  節

  ヨンウォンが、1歩進んだ。彼女の足取りに合わせて、X使者が進んだ。後ろを振り向いた。誰もいないガランとしたリビングだった。今度は、彼女の足取りに続いて、甲1が進んだ。後ろを振り向いた。相変わらず誰もいないガランとしたリビングだった。2歩進んだ。リビングが草の生い茂る野原に変わった。はるか遠くに煙が立ち上り、角笛と銅鑼の音が騒がしかった。ヨンファがそこに向かって駆けて行った。恋しい死神たちと会える生と死の境界、戦場に向かって彼女はいつも走っていた。いつしか、背中には矢筒を背負っていた。手と体は傷跡だらけになっていた。ヨンファは世族(代々、国の重要な地位や特権を受ける家柄)との婚姻では無く、戦場で自分の使い道を見つけた。

「ヨンファは何故また、こんな所でウロウロしているんだ?」

  ヨンファが振り向いた。透明になった甲5だった。ヨンファが一人になるのを待って、声を掛けてきたのだ。髷を結い上げているのを見ると、亡者を導くために出て来ているのではなかった。彼はヨンファが育つ間、度々現れて、安否を確かめていた。この世に帰すべきだと言い張った責任感が、彼の足をしきりにヨンファに向かわせた。初めは甲1が伝えてくれた知らせを聞いて、安全だけをちょっと確認しに来ていたが、うっかり見つかってしまった。それからは、敢えて隠れて探ることも無くなった。甲2と甲4も、彼を通じて互いの安否を交わしてきた。

「私はこう見えて、兵士たちの士気を高めるのに、結構役立っているんですよ。城主の娘が兵士たちに混じって一緒に戦うのだから。まぁ、娘扱いされていないのは皆んな知ってるんだけどね、ははは。他の使者様たちも皆さん、お元気ですか?」

「俺たちは、昨日も今日も変わりないさ。」

  なので、七歳のヨンファは彼らにとって、新鮮な楽しみだった。ヨンファが木の根元に座った。甲5も横に座った。

「木が伐採され続けているので、こんな木に出会うのも中々難しいです。」

  木は貴重な武器になるので、世の中はどんどん荒廃していった。

「ずいぶん大きくなったな。大人になったよ、無事に。」

  苦労無く生き残ったのではなかった。ヨンファは異母兄弟からの蔑視の中で、彼らの下女のような役割まで果たしながら、がむしゃらに生き延びてきた。死神たちが訪ねて来てくれるまで城を離れなかった。生き残ることで、死神たちの苦労に報いたのだった。

「でしょ?私、本当に娘らしくなったでしょ?甲5使者様の目にもそう見えますよね?」

「ああ、感心するよ。」

「じゃあ、甲1使者様に1度だけ来て欲しいとお伝えください。たった1度だけでいいですから、ねっ?」

「お前は俺を見ればその頼みばかりだし、甲1使者はうわの空で聞いてないし。さてさて、困ったことだ。」

  甲1は三途の川を渡った時に受けた内傷により、この世を行き来する事はできるだけ控えていた。まだ戦争中だから、私的な事でむやみに気力を浪費することが出来なかったからだ。ヨンファは、完全に回復したと聞いていたので、残念な気持ちになるのは仕方なかった。

「どうして聞かないんでしょう?私が綺麗な女性になれなかったのは申し訳ないですが、それは仕方ないことです。甲2使者様のように美しい女性になるには、数え切れないほど転生しても不可能なことなのに。人間は絶対、あの方のような顔と体つきにはなれないんですよ。」

「甲1使者が来ないのは、お前の顔立ちとは何の関係も無い。ははは。」

「甲1使者様は、私にはとても薄情だから。顔を一度見せてくれるのが、そんなに難しいのかしら、ちえっ!」

「お前が理解してやれ。彼はあの世を離れにくい位置にいるんだよ。」

「私こそ、あの世に行くのがもっと大変な位置にいる人間なんですよ。私がこの世を離れるよりも、甲1使者様があの世を離れる方が、もっと簡単なんじゃないんですか?私が多くを望み過ぎてるってことですか?今の甲5使者様のように、ちょっとだけでも寄って欲しいって言ってるだけなのに。私が甲1使者様に再び会うためには、もっと大きな戦を探すしかありません。」

  甲5は、このままではヨンファの寿命が縮むのではないかと心配になった。今までにも、死神たちによって変数が出来てしまってるはずだ。

「うーん.........。ヨンファの他の願いは聞いてやれなくても、それくらいは何とかしてみるよ。」

「本当に?約束してくれますよね?」

「約束は出来ない。それでも、せっついてみるさ。俺がしつこく頼んでみたら、面倒でも出てくるだろうから。だからお前も危ない事はするな。」

  ヨンファは答えず、にっこり笑うだけだった。

「私は甲5使者様がこうして来て下さるだけでも正直、とても幸せです。私を心配してくれる存在がいて下さるということがどれほど心強いか分かりません。見た目だけが美しいんじゃなくて。」

「それでも俺は、お前の閻魔符命状を受け取ったら、連れていくだろう。」

「あらっ!私は甲2使者様ならぜひ着いて行きたいですわ。」

「それは俺たちが選ぶんじゃないからな、ははは。」

  ヨンファが然るべき寿命を受けて死を迎えるのなら、他の使者たちも心の荷を下ろすことが出来る。もちろんヨンファが彼らを忘れれば寂しい気持ちはあるだろうが、この魂には次の生があるから我慢出来る。来世はもう、ヨンファではなくとも。その時はもう自分たちには会わずに、この世の中の事だけを思いながら生きていって欲しいと願った。

「私が死んであの世に行ったなら、ちょくちょくお会い出来るのですか?」

  甲5は悩んだ末に、正直に答えた。

「ヨンファが死んだら、俺たちのことを忘れるようになっているんだ。今生で見て感じた全てのことを。死とはそういうことだ。」

  ヨンファに彼の言葉は深く届かなかった。それでも記憶には刻まれた。

  甲5があの世に帰ろうとした時、木に絡みつきながら降りてきた蛇が、ヨンファの首目がけて大きな口を開けているのが見えた。その瞬間は何も考えていなかった。ただヨンファの肩を掴み、一緒に空間移動しただけだ。

「え?どうなってるの?なぜ急に、木があんなに遠くにあるんですか?」

「蛇がお前を.........、あぁ!」

  甲5も自分がしでかしてしまった事に対し、遅ればせながら今になって驚いた。彼の算法は複雑だった。辺りに死神はいなかった。蛇に噛まれたからといって、直ぐにではなく何日か患って死ぬ事もあるから、死神はもっと遅れて現れる場合もあった。けれど、そもそも甲5が来なかったら、ヨンファはその木の下に座っていなかったはずだ。だから蛇に噛まれることは無かった。ヨンファの寿命に影響を及ぼしたかどうかは判断がつかなかった。

  甲5はもう、ヨンファの安否を気に掛けるのはここまでだと思った。無事、大人に成長したし、今死んだとしても、短命とは言えない。この戦争の最中に早死する命も多いので、死神たちの過ちは挽回したというわけだ。甲5は笑顔をもって、最後の挨拶に代えた。そしてこれ以降、ヨンファを訪ねて来なかった。代わりに彼は、ヨンファの願いを叶えてやった。甲1を説得して、送ってくれたのだ。これが甲5の犯した過ちだった。

*********

  D -  9

  病院に行く道は、ある程度慣れてきていた。なので以前のように、怯えた体を丸めて地面だけを見ながら歩きはしなかった。だからといって、完全に顔を上げることは出来なかったが、たまに街路樹と空を見る余裕は出来た。ヨンウォンが足を止めた。歩道ブロックと街路樹が消え、広い野原が現れたからだ。これはヨンファの記憶であることを、今はよく分かっていた。知らず知らずに後ろを振り向いた。ヨンファではなく、ヨンウォンの現世で建物の中に急いで身を隠す男がいた。とても遠くからヨンウォンの後をつけていたが、急に振り向かれたために驚いて隠れたコ・ガンスだった。それでも彼は気にしていなかった。こんなスリルさえ楽しんでいた。

  前世であるヨンファが振り向いた所には、無体化した甲1が、鎧を着たまま立っていた。七歳の時に別れて以来の再会だった。ヨンファが涙ぐんで言った。

「何故、今頃来たのですか?どれほど待ったことか.........」

  甲1が無表情で言った。

「会いたくなかったからだ。」

  ヨンファは膨れっ面をして見せたが、直ぐにはち切れそうな笑みを取り戻した。涙が落ちたが、それは喜びから出たものだった。

「平気ですわ。私がすんごく会いたかったんだから。だから甲1使者さまが私に会いたくなくても構いません。」

  甲1の手が、ヨンファの顔に近づいてきた。彼は手だけ有体化させて涙を拭いてくれた。

「お前も俺に会いたがるな。」

  街路樹が現れた。そして地面には、歩道ブロックが敷かれていた。ヨンウォンは気を取り直して病院に向かった。カビルをよく知っているから、彼の性格を知っているから、彼の心配りを知っているから、彼の言葉はヨンファのためを思って言った言葉だったのだろう。だからこそ、ヨンファの甲1使者は、カビルに違いなかった。

「甲1使者様は、ヨンファがこの世に心を寄せて生きるように願ったんだわ。カビルは聞いていたのよ。彼を探していた七歳のヨンファの泣き声を。」

  ヨンウォンは病院に飛び込むように入った。待合室で待っている間も、心臓がドキドキしていた。そして彼女の順番が来るやいなや、診察室に駆け込んだ。

「院長先生!カビルがそうなんです!」

  シモが手を上下に振りながら、落ち着けというサインを送った。そして指でドアを指した。まだドアが閉まっていなかった。ヨンウォンは診察室のドアをピチっと閉めて座りながら、あの世のドアの方をちらっと見た。

「あっ!あちらのドアが消えています。私の目が正常になったとか......」

  シモの手にある黒い手袋は相変わらずだった。そして、また続けて言った。

「目は変わってませんよね?なのに何故、ドアが?」

「一時的に閉鎖しています。ヨンウォンさん、診察室に来たのは久しぶりですよね?」

「これまで院長先生がうちの家にいらっしゃってたからです。あのドアは、カビルが来られないことと関係あるんですよね?」

  シモがうなづいた。

「さっき電話で言ってたけど、甲1使者が昔のヨンファの例の甲1使者ってことなんだね?」

「そうです。間違いないです。他の人ならともかく、私が間違えるはずがありません!」

「ヨンウォンさんがそう言うのなら確かだと思うよ。」

  シモはショックを受けた状態だった。彼の推測もそっちに傾きはしてたものの、ヨンファの記憶を持ったヨンウォンから聞くのとは、ショックの度合いが違った。彼女の答えは推測ではなく、事実に近いのだから。ヨンウォンが再び神妙な面持ちで話した。

「私は甲2使者様も分かっていました。甲5使者様もです。なのにどうして甲1使者様だけ分からなかったのでしょうか?たぶん、外見が全く同じではありませんでした。若干、違うのです。どう言えばいいのでしょう.........、もっと今風と言うか…。カビルもそうなんです。髪の毛の色がガラリと変わりましたが、その他は変わってません。印象はほぼ同じです。」

  ヨンウォンの耳に、甲1が言った言葉が蘇ってきた。

『いつも君に逢いたかった。会う前からずっと。』

  たとえ記憶はなくても、心は消えていなかったのだ。彼は記憶にも残っていない心をずっと抱き続けてきた。ヨンウォンの目から涙がこぼれ落ちた。もしかしたらヨンファのものかもしれない涙だった。

「何故.........、なぜ彼らは皆んな、ヨンファを忘れてしまったのでしょうか?私の前世は皆んな、彼らを忘れなかったのに.........」

「僕達もそれが知りたいんだ。本当なら、その反対じゃなければならないのに。」

  シモがティッシュを取ってヨンウォンに渡した。そしてヨンウォンの涙が止まるまで、静かに待った。職員達には前もって、ヨンウォンが診察室に入ってきたら、帰っていいと言っておいた。時間は差し迫っていなかったが、心の焦りはあった。それでも我慢した。今一番混乱しているのは、ヨンウォンなのだから。ヨンウォンが涙を拭いてうなずいた。もう大丈夫だという意味だった。シモは最も急を要する事から聞いた。

「ヨンウォンさん、もしかして閻魔符命状は覚えてない?」

「その単語は聞いたことがあります。甲5使者様が、もし自分に私の閻魔符命状が出たら連れて行くだろうと言っていました。その後もヨンファはもっと生きていたと思います。その話があった後に甲1使者様と再会したんですから。」

「もう少し思い出してみて。これ、本当に重要なんだ。」

「私、それがどんな形のものかも知らないんです。」

「だろうな。はぁぁ…」

  シモのため息は深かった。ヨンファがそれを見たはずはなかった。人間に見せるものではないのだから。とすれば、結局、この部分だけは死神たちが記憶を取り戻さねばならないのだ。シモの心に引っかかる事があった。暗黒の牢獄の地下にいるという蝶。つまり、誰かの記憶。それすら記憶に無い甲1。そこに答えがある可能性が大きかった。

「カビルはいつ頃来られますか?」

「それは僕にも分からない。僕らとも連絡が遮断されているからね。それよりヨンウォンさん、甲1使者が再び来るまでは、出来れば1時間に一度は必ず電話して。安否確認。簡単なメールでもいいけど。僕はしばらくこの世にいるから。」

  実際、これも意味は無かった。33の呪いが完全に破れない限り、死は如何なる形であれ訪れる。元来、死は地雷のようにとても近くに無数に敷き詰められている。いつ、どんな地雷を踏むかの問題に過ぎない。

********

  D - 7

  甲21は便利屋の人間の職員たちに手伝ってもらって、コ・ガンスに関する資料を確保しつつあった。しかしこれも限界にぶつかった。特別捜査チームも状況は似ていた。

「クソっ!玉皇国が俗名だけでも功過格で確認してくれたら、位置ぐらいは直ぐに分かるのに。私達は魂を見ないと分からないから。コ・ガンスの写真か映像の1つでもあれば、何とかなるんだけど.........」

  たとえ使者庁の所属でなくとも、甲21も月職である。なので、その魂を1度確認してから全国のCCTVをランダムに目を通す方がむしろ早いという策略だった。

「あっ!トイレで着替えて出てくる映像を確保してあるって言ってたわよね?」

  甲21は少し考えて、特別捜査チームのPCに接続を試みた。重要な証拠だからきっと保管してあるはずだ。国科捜にもまだ有るだろうが、セキュリティを開くには、特別捜査チームの方がいくぶん容易だろうという判断だった。接続は比較的簡単に出来た。ところが映像を探すのに時間がかかった。

「見つけた!」

  外見は変わっていても、入る場面の魂と出てくる場面の魂が一致する映像を確認した。甲21が得意になって鼻歌を唄っていたが、首を傾げた。

「えっ?この魂、最近見たことあるんだけど.........」

  甲21は自分のコンピュータディスクの中を検索した。彼女が探していた映像は、ごみ箱の中にあった。クリックした。この前、甲1の要請を受けて、イ・ジョンヒの母親の葬儀場周辺のCCTVから、ヨンウォンが消える場面を消すために持ち出した映像だった。そこにヨンウォンの後を追うように行ったり来たりする老人が映っていた。甲21は、その老人が向き直って正面の姿が見える位置で停止ボタンを押した。特別捜査チームで確保している映像の男と同じ魂だった。

「こいつがコ・ガンス?ところで、どうしてナ・ヨンウォンの後を?」

  甲21がいつにも増して赤く燃えるような髪をぎゅっと握りしめた。

「あぁ.........、見てはいけないものを見た気がする。これを私ひとりでどうしよう?」

  甲21が大急ぎでシモに電話した。今現在、相談する相手は彼以外にはいなかった。

 ┈ 何かあった...... ┈ 

「オッパ!ここに来れる?」

 ┈ 急ぎなのか? ┈ 

「急ぎよ!ナ・ヨンウォンのことよ!」

  シモが便利屋に現れた。彼は着くやいなや、ソファーにどっかり腰を下ろした。

「ふぅ!こういうのを1度やってみると、使者庁の月職たちがどれだけ強い奴らなのか分かった気がする。一瞬で放電する気分だよ。自分の身一つでもこんなに大変なのに、荷物まで付けて三途の川を軽々越えるなんて.........」

「オッパ、感心してる場合じゃないわ。こっちに来て、これを見て。」

  シモが立ち上がって、甲21の席の方に行った。そのモニターに映し出されている二つの映像を比較し、確認した。

「どちらも同じ魂だね。これが何だって?」

「こいつがイ・ジョンヒを殺したと推定されてるコ・ガンスという人物なのよ。」

  シモも深刻な表情に変わった。

「なぜ、ヨンウォンさんを?」

「まだよく分からないわ。偶然会っただけなのか、そうじゃないのか。」

「ヨンウォンさんは外出はほとんどしない。会ったとしても、初対面の可能性が高いんじゃないのか?」

「でも確かに後をつけている感が強いわ。ナ・ヨンウォンを見失って、再び戻ってきた感じしない?」

「イ・ジョンヒに似ていて、着いて行ったということも.........、ああっ、分からない。頭がごちゃごちゃになる映像だな。」

「中央管制センターを通じて、連絡を入れられないかしら?」

「あっちは非常事態なのに、こちらが大騒ぎしてどうするんだ?アイツらが戦闘組じゃないんならまだしも。」

「結局、私達だけで判断しなくちゃならないってことね。」

「はぁ!コ・ガンス、現在の位置は不明って言ってなかったか?」

「私もさっき見つけたばかりなの。」

「しかし、まさか。本当にそうなら、相当悪辣なヤツだな。どの面下げてそこに顔を出せるんだ?どんな気持ちで?」

「そこに行った気持ちなんて、私の知ったことじゃないわ。それより、あいつがイ・ジョンヒの死亡の知らせをどうやって聞く事が出来たのかって事が重要なのよ。これ、捜査チームに知らせてあげて。」

「どうやって?僕達のこと、知らないのに。」

「休暇中のカン・サムになりすますのよ。」

  二人は膝を突合せて、提供する情報を軽く整理した。そして長い時間かけて、嘘も創り出した。捜査チーム長のメールアドレスは、甲21が接続していた特別捜査チームのPCから見つけ出した。送り元はカン・サムのものを盗用した。まずは葬儀の時の映像を編集して添付し、簡単な内容を書いた。以前に聞いた捜査チーム長との電話のやり取りの時の口調を真似て、メールにも使った。

【重要な情報を見つけた。本映像は、コ・ガンスと推定される人物。被害者イ・ジョンヒの母親の葬儀場で録画された映像だが、誰の葬儀に参列したのかは正確には分からない。詳しくは捜査チームに確認してくれ。暫くは電話での通話が困難な場所にいる予定なので、メールでやり取りする。急用があれば、こちらのアドレスに送ってくれ。】

  IPアドレスは国内だということを追跡されないように、外国を経由させた。メールを送って甲21が言った。

「甲3使者ってさ、いったい何を考えて、この世でこんな事してるのかしら?」

「誠実なんだよ。」

「えーっ?!私たち月職の中で、一番誠実って言葉とかけ離れた使者じゃないの?」

「誠実ってのは、我々の本質とも同じなんだ。仕事のやり甲斐っていうのは、人間達にとっては精神病の一種なんだよ。社会的地位を確保することで、命を維持するのにより有利な立場を確保したという安堵感が、すなわち仕事のやり甲斐なのさ。使者庁の月職たちが、どんなに大変でも黙々と業務を遂行するのは、そんな性質とは違う。あの世に対する主人意識、役割に対する責任感、それが誠実さに表れてるというか?ヨンウォンさんが死に瀕しているにもかかわらず、雷帝を阻止してあの世を守っている甲1使者を見ろ。そばで見守る僕はやるせないよ。甲3使者だからといって、その本質は例外ではないんだよ。ただ僕達と方法が違うだけで、彼もあの世のために最善を尽くしているんだ。」

  甲21は素直にうなずいた。彼女も甲3の頼みは一、二度ははねつけたが、結局は全部聞いてやった。彼のする事には納得はいかなくても、あの世に害を及ぼさないという信頼があるからだ。メールが届いた。返信だった。

「もう確認したみたい。」

  メールを開いた。

〖さすがカン先生ですね!!急に休暇を取られたということで、私達は見捨てられたのだと思ってましたが、こんな大切な物を与えて下さるなんて。早速、調査します。私達はカン先生だけを信じています!!!〗

  シモと甲21には返信の内容より、感嘆符の数が目についた。

「感嘆符が2個と3個だ。熱烈だよね?」

「信じていますですって?もしかして甲3オッパ、人間たちにインチキ教祖ぶってるんじゃないの?」

「いくら甲3使者でも、そこまで堕ちちゃいないだろう。本質は大丈夫だって。何より、創造力が足りないから、嘘つく素質がないじゃないか。インチキ教祖は口でなるもんさ。」

  シモはソファーに戻った。空間移動したので、もう少しだけ休んでから帰ることにした。白衣を着て出てきてしまったので、タクシーで帰るの変だと思った。甲21も気分良くソファーの所に来て座った。

「君が見たと言ってた暗黒の牢獄の地下にいる蝶、それ、何だと思う?」

  甲21はそれを目撃した張本人だった。その後もずっと、それについて考え続けざるを得なかった。

「甲25オッパ、もしも私たちが死んで、記憶を取り出されたとしたら、その大きさはどのくらいだと思う?特に蝶の形なら。」

  蝶は薄かった。なのでガラス箱を製作する時、横と縦は他の象徴たちと似ているが、幅はとても薄く作る。まるで蝶の額のように。保管も書斎の本のように並べる。大きさも大容量を圧縮したように、他の象徴に比べて小さい。だから空間の占有率は低い。このような点で、記憶保管所では蝶は好まれた。

「さあね。死んだ月職を見たことないから。とてつもないんじゃないのか?それが蝶の形であっても。」

「色んな要素を全部考慮しても、私が見たあの蝶は、妙に曖昧な大きさだったのよ。」

  1つの事件についての記憶を容量に換算すると、人間と月職では明らかな差がある。概ね鮮明度が落ちる写真が連なっているのが人間の記憶としたら、高画質の動画が月職の記憶だ。この2つの容量を蝶の大きさに置き換えてみると、その大きさには凄い差があるだろう。

「もしも月職一人の一代記を蝶として抽出したなら、私が見た程度の大きさに減らすのは絶対に不可能だわ。けれど、一人の人間の一代記なら、それにしては巨大すぎるし。それで考えてみたんだけど、1人の人間の一代記についての月職の記憶なら、あの程度の大きさになるんじゃないかと思って。」

「君の話からすると、暗黒の牢獄の地下にいる蝶は、ヨンファについての月職たちの記憶を抽出したものだってこと?」

  甲21は大きく1度、うなずいた。シモが言った。

「手のひらを前に出してみて。」

  甲21がわけも分からないまま、手を前に伸ばした。シモがにっこり笑って、彼女の手のひらを自分の手のひらで叩いた。そして、親指を立てて見せた。

「その蝶を探ってみよう。そこにヨンファの閻魔符命状についてのヒントもあると思う。それを見つけたら、ヨンウォンさんの呪いも破る事ができるよ。」

  二人はまた、悩みに落ち入った。これをどうやって、あの世に足止めされてる甲1に伝えるのかが問題だった。しかも雷帝と対峙している状況で、いかにショックを与えないようにするかだ。

「えいっ!あの魂を、タダで雷帝に渡して終わらせたらダメなの?正直、地獄に入ってくる必要が無い魂だったわ。オッパもそれは感じてたじゃない。」

「うん、雷帝の心情も十分理解できるよ。それでも君や僕が、とやかく言うことじゃないんだ。」

  これは玉皇国の派閥問題に、運悪く巻き込まれてしまった閻魔大王の判決から始まったのだった。彼はまだ、本人が玉皇国の所属なのか、閻魔国の所属なのか、見分けがつかないようだった。この事に対する後始末は結局、使者庁の月職の役割になって、今に至っているのだ。

「ただ、今の問題は、雷帝の持つ権限が地獄にいる魂の救済に過ぎないということなんだ。既に地獄から出て転生を待っている魂を連れて行く権限はないんだよ。そして僕たちには転生まで無事に導く義務があるという事なんだ。」

「あいごー!頭が痛いわ。後1週間しか残っていないのよ。一体いつまでこの状態を続けるわけ?いっそこのまま戦争しちゃうとか。」

  シモが悩んだ末に決心したように言った。

「ヨンウォンさんの問題も、まさに緊急事態だ。一刻を争うのに、いつまでも待つことはできない。直ぐに中央管制センターに連絡してみて。メールでも構わないから。」

  甲21が、中央管制センターに電話をした。センター長の代理が電話をとった。だがその職員は、甲21の懇願にも関わらず、キッパリ断った。あちらの現在の進捗状況を尋ねたが、これに対する返事さえ聞けなかった。センター長の不在時に、マニュアルに反することをしたら今後、荒々しい非難を受けるという理由からだった。今は非常事態なので、マニュアルは一層、絶対的なものであった。甲21が電話を切って言った。

「こうなったら、私が出入国場に入るしかないわ。あそこは常時、解放されているから。」

「大変じゃないのか?」

「この前やってみたんだけど、上手くいったわ。骨が溶ける感じが少ししたけど、本当に溶けるわけじゃないから、ふふふ。」

「入ったら、ややもすると君まで足止めされるかもしれないよ。」

「入るのは大変でも、出る時は日職や時職のカプセルに相乗りするわ、うふっ。出る時って、空席がいくらかあるじゃない?」

「必ずまた、戻ってこいよ。僕一人じゃ、手に負えないから。ヨンウォンさんの死を防げなければ、医師として月職として、自己恥辱感に陥りそうだし。」

「私が甲25オッパのためにも必ず戻ってくるわ。」

  甲21はこぶしをグッと握って見せたあと、消えた。シモも消えて、甲3のワンルームマンションに移動した。

ピンク薔薇ピンク薔薇ピンク薔薇ピンク薔薇ピンク薔薇ピンク薔薇ピンク薔薇ピンク薔薇ピンク薔薇ピンク薔薇

きゃー 
タイムリミットまで後1週間でっせ
間に合うんやろか?
蝶の謎もやけど 連続殺人鬼も関わってそうな予感
ガーン
怖いけど 頑張って盛り上がろね
ハート